喘息の発作が出てしまい、仕事を欠勤するように

それ以来、彼に関心を持ってたびたび話しかけてきたという。

「障害者枠って入社試験するの? 面接だけなの?」
「障害者枠だとお給料はどのくらいなの?」
「あなたの病名はなんていうの? 自閉症なの?」……。

嫌味ではなく、興味を持っただけだったのかもしれない。そんなこと(*10)があり、数日後、タカさんに持病の喘息の発作が出た。

松本孝夫『障害者支援員もやもや日記』(三五館シンシャ)

夜中に咳が出て止まらなくなり、息苦しさで眠れなくなる。こうした病状は精神状態と密接に結びついているように思う。さらにその翌日、タカさんは朝、起きてこなくなった。職員が部屋に行って、起きてくるように促しても、布団から出てこない。この日を境に、仕事を欠勤するようになってしまった。

自分の気持ちを言葉にして伝えることが苦手なタカさんにとって、これが拒絶の意思表示なのだった。障害を持った人たちが一般企業に就職する際には本人たちの意欲や努力が欠かせない。だが、それだけではうまくいかない。受け入れる側がどのように迎え入れるか、その姿勢が問われているといえる。制度や仕組みも大切だが、それ以上に重要なのは、いつだって人の心なのである。

(*10)店での出来事については、「就労支援センター」相談員の田中さんから西島さんへと報告があった。西島さんも私もタカさんへの期待が大きかった分、落胆した。

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