親孝行はできる範囲でやればオッケー

「親を大切にしたい」という気持ちは、多くの人が持っています。ただ、どういうやり方でどのぐらい大切にすればいいのか、それは誰にもわかりません。親自身がどんな親孝行を望むかも、状況によって変わってくるでしょう。

焼肉食べ放題だったら「もうこれでじゅうぶん」という限界やゴールを決められます。そのへんが曖昧なのが「親孝行」の難しいところ。「まだ足りない」「もっとやれるはず」と思い始めたら、一種の無間むげん地獄に陥ってしまいます。

漠然と「もっと親孝行しなきゃ」というプレッシャーを強く感じている人は、力を込めて「無理をする必要はない」と自分に言い聞かせましょう。そもそも、子どもに無理がかかる親孝行をされたって、親もきっと嬉しくはありません。

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自分にとっての「できる範囲」は、さまざまな要素が絡み合って決まります。いっしょに住んでいるか離れて住んでいるか、お互いの年齢や健康状態や経済状況、親の性格と自分の性格、配偶者の考え方や配偶者と親との関係、子ども(親にとっての孫)がいるかどうかやその子が何歳ぐらいか……。

親が昨今話題になっている「毒親」で、親孝行したいとはまったく思わないし、いっさい連絡を取りたくないケースもあるでしょう。そういう場合は、関係を遮断したまま何かの拍子に思い出すぐらいの状態が、自分にとっての「できる範囲」です。

「親を憎むなんて親不孝だ」といった世間一般の無責任な常識に惑わされて、「できる範囲」を無理に広げる必要はありません。苦しい思いをして親に対する憎しみが増したり、結局は衝突したりするのがオチです。

親が元気で円満な関係を保てているなら、自分の顔や孫の顔をたくさん見せたり、たまには食事や旅行に連れだしたりなど、いっしょに過ごす楽しい時間を増やすのがいちばん。親は親で、こっちが知らない世界や付き合いがあります。

親に介護が必要になった場面でも、むしろそのときこそ「できる範囲」を強く意識したいところ。固定観念に引っ張られた罪悪感や幻想でしかない「世間様の非難」を気にして、「自分が面倒見なければ」と思い込んで無理のある決断をしてしまうと、親子ともどもつらい思いをすることになります。人生がそうであるように、親孝行も「自分にできること」しかできません。