しかし、何十年にもわたって家賃をいくら払ったとしても、自分のものとなって返ってくることはありません。その意味で、住宅を買うことの本質は「資産形成」であって、住宅ローンはある意味「家を分割払いで購入する」ということです。金利も上乗せされますが、借り入れる金額が数千万円になるにもかかわらず、金利は低いものとなっています。家には担保となる価値があるため、キャッシングのような高金利は払わなくていいからです。

「持ち家派」の大きなメリットは、ローンさえ返し終えればその家に生涯住み続けられることです。つい住処すみかです。もちろん、何十年と住んでいれば、修繕補修の問題も出てきますが、賃貸料に比べれば金額的にはぐっと抑えることができます。

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賃貸派は「老後に2000万円」+「老後家賃2000万円」

これに対して、老後も賃貸派の人たちは、「老後の家賃」についても考えておかなければいけません。少し前に「老後に2000万円必要だ」といった論が世間をにぎわせましたが、この「老後」は「持ち家」の場合の想定でした。

ですので賃貸派は、老後は、この2000万円にプラスして家賃も必要になってきます。老後は、月5〜6万円の家賃の家で暮らすと割り切ったとしても、さらに「2000万円」が必要です(仮に月6万円として年72万円、老後を30年として2160万円)。もっといい部屋に住みたいなら老後の家賃はもっと高額になります。月10万円なら3600万円ですし、ここには更新料や家賃の引き上げは含まれていないので実際はもっとかかります。

ゆとりや豊かさをもった老後のために2000万円を確保しようという試算に対して、賃貸派は、さらに家賃に相当する2000万円を乗せて「老後4000万円」ということになるわけです。

家賃の引き上げ、更新拒否(建て替えなどを理由とした2年後の退去要請など)を考えると、老後の賃貸暮らしには少なくない不安があります。

現役時代は、賃貸派と持ち家派の支出は同じであったとしても、老後まで見据えれば違った世界があります。賃貸派は賃貸派なりの覚悟と資金計画が必要になるのです。