イギリスのブリストル大学の名誉アカデミッククリニカルフェローであるNimmo-Smithたちが2020年に報告した調査では、不安障害の中でも社会不安性障害や強迫性障害の発症割合が、定型発達者と比べて特に高いことが報告されています。

同級生の輪から排除されてしまうのではないか…

1つめの社会不安性障害は、社会不安障害、社交不安障害とも呼ばれます。周囲の注目が自分に集まるような状況で「何か失敗して恥をかくのではないか?」という強い不安や恐怖、緊張を感じることを指しています。

社会不安性障害のある1人の当事者の方に、ご自身がどんな場面で不安を感じるのかを尋ねました。

この方は、幼少期に海外に住んでいた経験があり、小学生の時に日本の学校に転校しました。集団の中での協調性を重んじる文化の日本の学校の中で、自分だけ外れた行動をしないように大変な苦労を経験したことを語ってくれました。

最初は、同じクラスの人たちは、なにかしらコミュニケーションの訓練を受けているんだと思い、自分もそれを身につけるために、テレビを見て、人がどんな時に相槌を打ち、笑い、振り向くのかといったことを勉強したといいます。

そうして少しずつ自分をカモフラージュしていったそうです。そうした行動は、自分が人と違う行動をとることで、同級生の輪から排除されてしまうのではないかという不安からとった行動だったといいます。

特に苦手としているのは、いわゆるスモールトークだと教えてくれました。仕事などの具体的な内容について話すのは緊張しないものの、目的のないちょっとした会話をすることに大きな不安を感じてしまうそうです。

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嫌われることへの不安に敏感になる当事者

例えば同世代の人と食事をする場面では、会話の輪に入っている空気を出さないといけない、目を見なければいけないなどといったたくさんの不安を抱えます。

こうした会話の場面では、自分が暗黙に想定している定型発達者の期待する返しを自分ができているかが気になり、あたかも狭い橋から落ちてしまわないようにバランスをとっているような感覚でいることを教えてくれました。

ずれた言動をして相手を怒らせてしまうのではないか、相手に不快感を与えてしまうのではないか、そんなたくさんの不安を抱えながら、何とか定型の集団から浮いた存在にならないように努力してきた様子を、この方との会話から深く理解しました。

「ASD者は社会的な情報に対して無関心」というイメージが根強いからでしょうか、社会不安性障害の高い割合を意外に感じる方もいるかもしれません。

しかし実際にはASD者は社会的な情報に鈍感なわけではなく、受け取った情報に対する反応の様式が定型発達者と異なることから来る失敗の経験の蓄積により、定型発達者よりも社会的な情報にナーバスになり、強い不安を持っている場合が多いと考えられます。