学校から遠い住宅地は不利になる

対して、商業施設の近隣は住宅地として一定の需要があるが、現代の地方部の商業地は、既存の市街地から離れた幹線道路沿いに展開されている。いわゆるロードサイド型店舗で、あとから大規模に商業地として開発されたものだ。

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国道沿いに展開されたロードサイド店舗群。(千葉県東金市求名)

周囲はまだ広大な農地だったり、宅地として利用できたとしても、昼夜絶え間ない大型車の走行音などで住宅地として適していない場合もあり、こちらも好みが分かれる。

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大型商業施設の近隣に開発・分譲された新しい住宅地。駅から徒歩で30分ほどの距離で、最寄り駅へのアクセスは考慮されていない。(千葉県山武市成東)

そのような状況の中で、現在の子育て世帯、つまり新築住宅を求めるメインの年齢層が住宅地を選ぶ上でもっとも重視している要素のひとつが、小中学校からの距離である。学校から遠い住宅地は、中古住宅であればまだしも、新築用地としてはそれだけで市場において大きく不利になっている。

学校の統廃合がもたらす悪影響

これは現在、地方の住宅事情を根本から塗り替えてしまうほど急速に変化が生じている事象である。現代の日本は少子高齢化が進み、地方においてはごく一部の人気エリアを除き、ほぼ例外なく児童数が減少している。

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2020年3月で閉校した千葉県・横芝光町立大総小学校。児童の減少に伴い、多くの過疎地で小学校の統廃合が相次いでいる。(千葉県横芝光町木戸台)

今や小規模自治体では、小中学校が1校ずつしかないところも珍しくない。それでは学区があまりに広すぎ、遠方に住む子供はとても徒歩では通えない。過疎地では路線バス網の衰退も著しく通学利用にも適さないので、スクールバスを運行し、児童の送迎を行っている自治体もある。

だが、通学自体はスクールバスで間に合うかもしれないが、子育てを行う住環境として選択するには、それだけでは不充分である。近隣に同世代の児童がいない環境では、近所で友人を作ることもできなくなる。

児童のいない地域ではもちろん学習塾などもなく、交通手段もないのでは、自力ではどこへ通うのも困難だ。

通学路なのにガードレールも、縁石もない…

2021年6月28日、千葉県八街市八街の市道において、下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、児童5名が死傷するという事故が発生した。八街市内ではその5年前にも、登校中の小学生の列に車両が突っ込み複数の児童が怪我をする事故も発生しており、市内の危険な通学路の改善を求める声が高まることになった。