日本の郊外には、タダ同然の住宅地が大量にある。どんな共通点があるのか。「限界分譲地」を取材するブロガーの吉川祐介さんは「千葉県北東部の場合、車移動を前提にしているため、ガードレールや縁石のない道路が多い。危険な通学路が放置され、子育てにはリスクが高い。だからどんなに安くても住みたがる人はいない」という――。
クルマがなければ生きていけない
筆者が住む千葉県には多くの限界分譲地がある。宅地造成されても手つかずのままになっている分譲地のことだ。都心へは車で1時間という立地であるが、売れずに放置されている。その原因について、本稿では子育てという切り口から見ていきたい。
一般的に、不動産の価格を決める上で重要な判断基準となるものが、最寄り駅、あるいは商業地域・施設からの所要時間である。
しかし、それは主に公共交通機関による移動で生活が成り立つ都市部における判断基準である。地方都市や、限界分譲地を多く抱える千葉県の小都市では、相対的に駅の重要性が低い。
周知の通り、すでに多くの地方部では日常の移動手段は完全に自家用車一択となっている住民が大半だ。鉄道はまだしも、バスにいたってはもはやその存在すら意識していない住民も少なくない。
駅から遠いほうが良いとまで考える住民は少数派だと思うが、地方の小都市の鉄道駅は古い旧市街地に位置することが多く、田舎と言えど家屋は密集し、道路も狭く自動車の通行に適していないところが目立つ。
ところが地方の場合、都市部の鉄道とは異なり肝心の運行本数が乏しい。自宅が駅前であろうと通勤や日常生活で自動車が必要になる場面は多々あるために、地価に見合った利便性が得られない鉄道駅周辺を避ける住民がいるのはむしろ自然なことである。