嫁と姑との時間

宮畑さんが東京へ戻った翌朝、宮畑さんの妻は、朝7時に義母に起こされた。義母は7枚も着込んでいるのに、「寒い寒い!」「コタツが欲しい!」と言うため、コタツを買いに行き、帰宅するなり義母が自分でセットする。すると突然ブレーカーが落ちた。

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それからというもの、義母は「怖い怖い!」と連発し、宮畑さんの妻にまとわりつき、10分と離れようとしない。

妻が掃除や洗濯をすると、義母は手伝った。その後「散歩がしたい」と言うので妻は付き合い、帰宅後、「昼ごはんにうどんが食べたい」と言うので妻はうどんを作る。つゆの味を義母に味見させたところ、いつもより薄めにしたのに、「からい! からい!」としつこく言い、薄める。義母は長ネギを見ると、「国産じゃないと食べない」と言い、食べ始めると、「食べる前に外出をすれば良かった」と言い出す。

食事後、妻がトイレに入っていると、「早く外出しよう」と急かす。スーパーで買い物をしているときは自分でスタスタ歩くのに、人が多いところだと重病人のようにべったりと妻に絡みついてくる。

帰宅後、足のむくみなどまったくないのに、「象さんの足だから!」と言い張る。暑いと言って上着を脱いで下着のみになっているのに、「この家は寒い」と言うので、「さっきお義母さんが暑いと言ったから暖房を切ったのよ」と言ったら、「そんな怖いこと! 私のこといじめるのか! なんでそんなことするんだ!」と大騒ぎ。「私は団子なんて食べへんで!」と言いつつ、パクパク。すべてが支離滅裂だった。

「夕食は卵のおじやにしよう」と言うので、味付けを任せたところ、味がない。近所からもらった野沢菜漬けの塩抜きをして少し食べてもらった途端、「からい! からい!」と叫び、「だから田舎の人はいやだ!」とぶつぶつ。

入浴は嫌がる。新しい下着に着替えるよう促すと、「病院でもそんなに着替えていないし、洗濯もせんでええ」と不満顔。「息子は一緒に寝んでもええと言ってたけど嫌だ。一緒に寝よう」と言うため、一緒の部屋で寝ると、1時間おきに起こされ、トイレへ。

翌朝は5時に起こされる。朝食後、義母は「散歩に出たい」と駄々をこねるが、「まだ7時だから暖かくなってから」と言って掃除を始めると、「掃除なんて毎日するものじゃない!」と怒鳴る。

一緒に暮らしていた男性の悪口を言い始めたかと思うと、「子どもたちに迷惑を掛けるから、2人で死のうと話していた」と言うため、妻は義母をたしなめる。

夜はまた入浴を渋るが、1時間ほど説得するとようやく入った。だが入浴後、「湯をがぶがぶ飲んだら下痢した」と一言。薬を飲ませる。

その日は別々に寝ても良いこととなり、「明日、起こしに行ってもいいか?」と聞かれたので、妻は「いいですが、6時か7時にしてください」と伝えたところ、「8時か9時ね」と確認される。

翌日もその次も、義母はわがままや無理難題を言い続けた。妻がたしなめると義母は、「ずっと一緒にいると言ったのに話が違う」とぽつり。「一緒にいるでしょ。もしも妹ちゃん(宮畑さんの妹)が一緒にいるとなると、仕事を辞めなきゃならないでしょ?」と妻が言うと、「あの子が来るならお金も考えてやらないと……」と義母。「私だって仕事をあきらめてお義母さんと一緒にいるんですよ」と妻が少し意地悪く言うと、義母は、「あなたは介護する人です」ときっぱり。妻は、「家族だから一緒に住んでいるとは思えないのだろうか?」と寂しい気持ちになった。

義母は、宮畑さんの妹(自分の娘)に対しては、「きつい子だから一緒に住みたくない」と言う。その割には、電話がかかってくると、あることないこと宮畑さんの妹に妻の悪口を吹き込む。

悲しくなった妻が、「妹ちゃんに私の悪口を言ってすっきりしましたか?」とたずねると、「すっきりしました!」と義母。

そこで妻が、「ねぇ、お義母さん。私叱った? お義母さんが困るようなことした?」と問うと、「だって、介護士じゃないっていわはるやん。ごはんだって、硬いし、からいし……」とぼそぼそ。「私だって人間だから悲しくもなるし、怒りたくもなるのよ」。

義母はしゅんとなった。