対立の背景に「選挙戦」の因縁?

「以前から、県の幹部職員を退職後に“天下り”として受け入れてきたケースも少なくない。だからこそ、県は何も言えなかったのでは」

そんな“癒着”とも見える実情にメスを入れたのが長崎知事だった。

長崎知事といえば、就任早々、当時の河野太郎行革担当大臣が主唱した「ハンコ廃止」に正面切って噛みついた「ハンコ知事」として一躍全国的にも名を馳せた。

その経歴を見ると、堀内王国とは少なからぬ因縁がある。

東大法学部卒業後に財務省に入省。小泉旋風とも言われた郵政選挙(衆院選)で初出馬し、反小泉となっていた堀内光雄氏と山梨2区で激闘。比例で復活当選したのちは、光雄氏の地盤を引き継いだ堀内詔子代議士(現社長・光一郎氏の妻)と幾度も激しい選挙戦を戦ってきた。

それだけに、因縁めいた関係ではあり、山梨県と堀内王国、富士急行との関係は熟知していたと言える。実際、かつての衆院選でも前回の知事選でもこの県有地問題の是正を公約に掲げて闘ってきた。知事就任で県の姿勢を一変させたのは、まさに公約の実行だったわけだ。

次の争点:96年前の賃料評価はずっと有効なのか?

今回の訴訟・判決が注目されたのは、冒頭で触れた通り、あくまでも民法上の契約によって、一私企業の独占的優遇・巨利が守られるのか、あるいは地方自治法による県民の財産・利益が守られるのか、という点だった。

第2ラウンドでは、さらに根源的な争いになりそうだという。

「1審判決では、山梨県と富士急行との県有地賃貸借契約は、富士急行によって別荘地が造成される前の山林原野の状態(素地価格)を基礎に算定された『継続賃料評価』で契約されており、双方の合意があるから有効だとした。

これだと、借地法を適用しなくとも、当事者間でひとたび素地価格を基礎とした継続賃料評価による地代算定に合意すれば、それが将来にわたって未来永劫、有効だということになってしまう。しかし、双方から出された証拠などでは、将来にわたって合意していたとの証明はないし、富士急行側もそのような合意をしていたとは主張していない」(司法関係者)

加えて、判決では、富士急行が別荘地造成にリスクとコストを負ったのであるから「素地価格を基礎にした継続賃料評価による地代算定をすべし」としているが、そもそもの貸し出しは1927年で、96年も前のことである。別荘造成事業が頓挫・失敗するリスクなどはすでに昔のことで、コストも含めてこの長い歳月の間に回収されており、むしろ大きな利益を上げていると見るのが妥当であろう。