「サボっている」と見られたのではないか
晶さんは小学3年生の冬に、精神科を受診。ASD(自閉スペクトラム症)と診断される。自閉スペクトラム症は一般的には対人関係が苦手、強いこだわりといった特徴をもち、発達障害の一つとされる。
「発達障害の診断を受けると同時に、聴覚過敏だということもわかりました。本人は聴覚過敏のまま生まれてきているので、自分に負荷がかかっていることにも気づいていなかったみたいです」
と、直子さんが言う。第1回の林良子さんもそうだったが、聴覚過敏とは身の回りの音が大きく聞こえ、ストレスを感じる症状だ。
「後から考えれば、精神年齢が高いため、周囲とのズレもあったのだと思います。また発達障害の特性でもありますが、言っていることの理解は早いのに、行動が追いつかない。周りから見ればなんでわかっているのにやらないの、と追及したくなるでしょう。怠けている、サボっていると見られたのではないかと思います」
しかし診断を受けても、晶さんの不登校は変わらない。学校に行けないならと、自閉スペクトラム症の子どもが通う児童発達支援事業所への入所を考えていた時、その支援員が当時もうすぐオープンする予定だった「ドーユーラボ ひやごん」の見学を勧めてくれたのだという。ドーユーラボでは、精神科の後藤健治医師(沖縄リハビリテーションセンター病院)と連携し、子どもの個性や特性を前向きに育むことに取り組んでいる。
「ADHDの大人ばっかりでびっくりしたもん」
直子さんは、ドーユーラボから「後藤先生の診察を受けませんか」と提案され、晶さんの担当医を変える決断をした。すると、晶さんはASDではなく「ADHD」(注意欠如・多動症)という診断であった。ADHDも発達障害の一つではあるものの、本人への環境調整や対処の仕方はまったく異なる。そして直子さん自身は「ASD」と診断され、それまで服薬していた抗うつ病薬の断薬を勧められた。
「後藤先生から、私の場合はうつ病が原因ではなく、発達障害があってそこから二次障害としてうつ病が起きているから、今飲んでいる薬をやめてみましょうと提案されました。断薬はきつかったのですが、しばらくすると雲が晴れたみたいにスッキリしたんです。『思考』だけでなく『視界』がスッキリしたほど。一時期、精神的にかなり追い込まれた時があり、その時の私にはうつ病の薬は必要だったと思っています。でもずっと飲み続けていたらと考えると怖いです」
晶さんの環境調整が必要なことも理解でき、対応を変えていったという。
直子さんは「居場所がなかった頃、行く場所ができて、後藤先生や仲間に出会えた。みんなの支援に救われた」と繰り返す。そして私ではなく晶さんに向かってこう話した。
「お母さんが一番助かったのは、あーちゃん(晶さん)の行動を理解している大人が(ドーユーラボに)いっぱいいたこと。ADHDの大人(職員)ばっかりでびっくりしたもん。私がおかしいんだって思うくらい」