なぜ日本の経済はよくならないのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「日本は、結果の平等を重視する社会主義国家だ。稼いでも高い税金が取られるため真面目に働く人ほど損をする。これでは経済がよくなるはずがない」という――。

※本稿は、藤巻健史『超インフレ時代の「お金の守り方」』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

頭を抱えているビジネスマン
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資本主義のアメリカ、社会主義の日本

なぜ、かつては二大経済大国と称された日米に、これほどまでの差がついてしまったのでしょうか。

その理由を端的に示せば、「資本主義国家のアメリカに対して、日本が社会主義国家だから」ということになるでしょう。

社会主義国家が資本主義国家に敗北したのは、20世紀の歴史が示す厳然たる事実です。ソ連が崩壊し、中国は建前はともかく、とっくの昔に資本主義国家になっています。

しかし、日本はいまだに社会主義国家であり続けている。だから敗北するのは当然だということです。

もちろん、日本は建前としては資本主義国家です。とはいえ、その現実は社会主義国家以上に社会主義です。

「日本は社会主義国家」――これは、モルガン銀行時代に海外から日本に転勤でやってきた部下が帰国する際、口をそろえて指摘することでした。日本は大きな政府で、政府による規制が強く、「結果の平等」を重視する。それはまさに社会主義そのものではないか、と。

日本では稼げば稼ぐほど高額な税金を取られます。一方、低所得者への生活保護は充実している。つまり、頑張って稼いだ人がなかなかお金持ちになれない一方、頑張らなくてもある程度の生活はできてしまう、ということです。これはまさに「結果の平等」です。

もちろん、様々な理由で働きたくても働けない人も多く、そういった人たちの生活は保護されなくてはなりません。しかし、働いても働かなくてもそれほど生活に大きな差が出ない、ということになると、誰が真剣に働こうとするでしょうか。これはまさに、社会主義国家が踏んできた轍に他なりません。

アメリカには世界から「天才」たちが集まるワケ

私はモルガン銀行時代、ベルリンの壁崩壊直後の東ベルリンに入り、社会主義とはどういったものかを体験したことがあります。

客のほとんどいないがらがらのレストランで、客より威張りくさったウエイトレスがやる気のなさそうに働いている。しかも、前菜、主食、デザートの3品コースが出てくるまで、なんと4時間もかかったのです。

でも、それは当然のことです。いくら愛想を良くしても料理を早く出しても、もらう給料は同じなのですから。