2022年12月、文部科学省は「通常学級に在籍する公立小中学生の8.8%に発達障害の可能性がある」という調査結果を発表した。2012年の前回調査から2.3ポイント増え、35人学級では3人ほどの割合になる。多くの当事者がいるはずなのに、その存在が知られているとはいえない。発達障害の当事者が見る景色・住む世界を、3回にわたってリポートする――。(第3回/全3回)
近藤晶さんの母親の近藤直子さん。
撮影=笹井恵里子
近藤晶さんの母親の近藤直子さん。

少女は何も言わない。会釈もしない

発達障害の少女は、挑むような視線でこちらを見た。

初対面の私に対し、彼女の母親は「こんにちは」となごやかに頭を下げるが、少女は何も言わない。会釈もしない。

「大きくなったねぇ」

場を和ませるように、南雲玲生さんが彼女に声をかけた。

「小さくなったら困る」

少女は淡々とした口調でそう応えた。

「そうだね。小さくなったら困るよね」

南雲さんも、感情を込めずに相づちを打つ。

小3から不登校になった理由が、わからなかった

ここは沖縄にある発達障害児が通う放課後等デイサービス(いわゆる学童)「ドーユーラボ」だ。創設者は前回の記事で紹介した、ゲームクリエイターの南雲玲生さん。ドーユーラボは沖縄県内に3施設あるが、そのうち沖縄県浦添市にある「てだこ」(2020年開所)にやってきた。

冒頭の少女の名は、近藤晶さん。現在中学3年生で、小学5年生から「ドーユーラボ ひやごん」(沖縄市)に、中学2年生から「てだこ」(浦添市)に通所している。

「ドーユーラボてだこ」の外観。
撮影=笹井恵里子
「ドーユーラボてだこ」の外観。

取材には、晶さんと、母親である直子さんの二人で応じてくれた。直子さんはシングルマザーとして、3人の子どもを育ててきた。一番上の長男が家を出て自活した8年ほど前から、直子さんと晶さん、次男の3人で暮らしているという。

直子さんに、大変だった時期を問うと「不登校の時期かな……」と、ポツリ。晶さんは小学3年生から4年間、学校に行けなかった。

「理解ができなかったんです」と、直子さんが続ける。

「私自身は学校が素晴らしいところとも思っていませんでしたが、かといって反発もせず、なんとも思っていなかったんです。自分はわりと優等生でした。晶も、1、2年生の頃は優等生だったんですよ。勉強もできるし、お友達ともハキハキと会話ができましたし……だから3年生から不登校になった理由が、わかりませんでした。本人に聞いても、なぜ行けないのかわからないんです」

改めて晶さんに尋ねると、「何となく」という言葉が返ってきた。「何となく不登校になって、そこからずるずる……うーん何がきっかけなんだろう」と、つぶやく。