少女は何も言わない。会釈もしない
発達障害の少女は、挑むような視線でこちらを見た。
初対面の私に対し、彼女の母親は「こんにちは」となごやかに頭を下げるが、少女は何も言わない。会釈もしない。
「大きくなったねぇ」
場を和ませるように、南雲玲生さんが彼女に声をかけた。
「小さくなったら困る」
少女は淡々とした口調でそう応えた。
「そうだね。小さくなったら困るよね」
南雲さんも、感情を込めずに相づちを打つ。
小3から不登校になった理由が、わからなかった
ここは沖縄にある発達障害児が通う放課後等デイサービス(いわゆる学童)「ドーユーラボ」だ。創設者は前回の記事で紹介した、ゲームクリエイターの南雲玲生さん。ドーユーラボは沖縄県内に3施設あるが、そのうち沖縄県浦添市にある「てだこ」(2020年開所)にやってきた。
冒頭の少女の名は、近藤晶さん。現在中学3年生で、小学5年生から「ドーユーラボ ひやごん」(沖縄市)に、中学2年生から「てだこ」(浦添市)に通所している。
取材には、晶さんと、母親である直子さんの二人で応じてくれた。直子さんはシングルマザーとして、3人の子どもを育ててきた。一番上の長男が家を出て自活した8年ほど前から、直子さんと晶さん、次男の3人で暮らしているという。
直子さんに、大変だった時期を問うと「不登校の時期かな……」と、ポツリ。晶さんは小学3年生から4年間、学校に行けなかった。
「理解ができなかったんです」と、直子さんが続ける。
「私自身は学校が素晴らしいところとも思っていませんでしたが、かといって反発もせず、なんとも思っていなかったんです。自分はわりと優等生でした。晶も、1、2年生の頃は優等生だったんですよ。勉強もできるし、お友達ともハキハキと会話ができましたし……だから3年生から不登校になった理由が、わかりませんでした。本人に聞いても、なぜ行けないのかわからないんです」
改めて晶さんに尋ねると、「何となく」という言葉が返ってきた。「何となく不登校になって、そこからずるずる……うーん何がきっかけなんだろう」と、つぶやく。