「マテリアルカルチャー」とは何か

このナガランドの首飾りのようなものを「マテリアルカルチャー」と呼びます。

日本語では「物質文化」と訳されています。ちなみに「マテリアリズム(物質主義)」とはまったく異なる概念です。

「物質主義」は、物質こそ根源的なもので、精神や感情は物質に規定されるという考え方です。ギリシャの自然哲学やマルクスの唯物論などの基盤でもあります。

一方「マテリアルカルチャー」は、それとは正反対の考え方です。

自然物はもちろん、モノ(物質)そのものの中に、モノを超えた生命性を感じ取ったり、逆にモノに対して精神性を仮託するという考え方のことです。

ちなみに、日本人の心の奥底には、このマテリアルカルチャーが存在しているように思います。

縄文人は、過去数万年の長きにわたり、山、川、海や草木、鳥獣、毎日使っている生活用品にも神が宿ると考えてきました。

写真=iStock.com/Shang-Jie Hsu
山、川、海や草木、鳥獣、毎日使っている生活用品にも神が宿ると考えてきました(※写真はイメージです)

その精神は、さまざまなものを「擬人化」するところなどに引き継がれているといえます。

カヌーの装飾がエージェントの役割を果たす

私が「マテリアルカルチャー」を初めて意識したのは、取材先となる秘境探しをしているときに、イギリスの社会人類学者、アルフレッド・ジェル氏(1945~1997)の論文を読んだ時でした。

それは、パプアニューギニアのトロブリアンド諸島で古くからおこなわれている、「クラ」という交易について、書かれたものでした。