否定する人、しない人に会ってわかったこと
→アメリカのカウンセラーが与えてくれた気づき
自分がなりたいものを言えば否定される――。
中学生当時の私は、そう強く思いました。そして、親や学校の先生に対して心に刻み込まれた感情は、「怒り」であり、「拗ねる」というものでした。
「『将来、何になりたいか』って聞いたから答えたのに、言わせておいて否定するの?
それって、はじめから答えは決まっているよね!」
中学3年生の私に言わせれば、大人たちがやった対応は「あと出しジャンケン」。自分たちが望んでいる「答え」を言ってほしいだけのように思えたのです。
もちろん、今となっては私の父親や学校の先生が言った言葉の意図も理解できます。
その後、拗ねてしまった私は、いろいろありながらもアメリカに留学することになりました。その留学先の学校には、「進学カウンセラー」と呼ばれる人がいました。
そのカウンセラーから「ケンタロウは、将来、何になりたいの?」と聞かれた私は、内心、「また否定されるのだろうな」と思いながら、「将来は、F1カーの空力デザイナーになりたい」と答えました。
すると、カウンセラーはこう言ったのです。
「素晴らしい。じゃあ、どうやったら本当にそうなれるか、一緒に考えてみよう!」
日本とはまるで違う反応に、「素晴らしいの?」と私のほうが驚いてしまいました。この対応は正直、新鮮でした。自分の夢が認められた気がし、自由に言っていいんだなと感じました。
ところが、実際に夢を認めてもらって、いざ、「どうしたらなれるか、一緒に考えよう」と言われると、実は、何ひとつ具体的に考えていなかった自分に気がつきました。頭から否定されるとカチンとくるのに、いざ賛成されると何をしていいかを具体的に考えていなかった自分に気がつく。
「ああ、そうか。相手に現実を気づかせるには、こういうアプローチもアリなのだな」ということを知った、貴重な経験でした。
→否定されないとどうなるのか?
この両極端な体験、また近年私が数多くの経営者やビジネスパーソンをコーチングしてきてわかったことがあります。それは、
●否定ばかりされると、怒りが生まれる
●否定ばかりされると、オープンに話せなくなる
●否定ばかりされると、信頼関係が生まれにくくなる
●否定ばかりされると、自己肯定感が低下し、自信を持てなくなる
ということ。逆に、
●否定されないと、ポジティブな感情になる
●否定されないと、もっとコミュニケーションを取りたくなる
●否定されないコミュニケーションでは、信頼関係が生まれる
●否定されないコミュニケーションでは、自己肯定感が高まり、自信が持てる
というシンプルな「事実」です。
「何を当たり前のことを……」と思う人がいるかもしれません。そのとおり、当たり前のことなのです。とはいえ、それをわかっていても私たちは「否定する」ことを意識的にも無意識的にも行っている「現実」があるのも事実なのです。