「フェラーリよ、お前もか」

これに対してわれわれカーマニアは、あくまで冷淡な反応を続けている。カイエンやウルスは、決して本物のポルシェやランボルギーニではない。

その証拠に、エンジンはどちらもVW製をベースにしている(ポルシェとランボルギーニは、ともにVW傘下)。ポルシェ伝統の水平対向6気筒エンジンも、ランボルギーニの象徴であるV12エンジンも、SUVには積まれていない。カイエンやウルスは、金儲けのための量産型イミテーションだ……と。

ポルシェ・カイエン V6 ティプトロニック 3.0(写真=Vauxford/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

買えもしないくせに上から目線のカーマニア(私を含む)は、フェラーリが出すと噂されていたSUVに対しても、「フェラーリよ、お前もか」と冷めた目で見ていた。どうせフェラーリも同じビジネスモデルを思い描いているんだろう。SUVを出せば、それだけで販売台数は倍増し、利益はそれ以上に増える。でもそれは本物のフェラーリではない! と。

搭載されたエンジンはまさかの“恐竜”

ところが、昨年9月に本国イタリアで発表されたフェラーリ・プロサングエ(イタリア語で「純血」の意)は、われわれの予想とは大きく違っていた。

ルックスはおおむね想像の範囲内で、背の低いスポーティーなSUVタイプである。フェラーリはこれをSUVとは呼ばず、4ドアスポーツカーと自称している。確かにリヤドアは小さめの後ろヒンジ。つまり、マツダRX-8のような観音開きを採用している。カイエンやウルスに比べると、スポーツカー寄りなスタイリングだ。

画像提供=フェラーリ・ジャパン

それより驚いたのは、エンジンがV12自然吸気だったことだ。排気量は6.5リッター、最高出力725馬力。間もなく生産が終了するフラッグシップモデルの812スーパーファストと、基本的には同じエンジンを積んでいた。812の最高出力は800馬力なので、チューニングの差はあるが、V12には変わりない。

V12自然吸気エンジンは、フェラーリの魂。エンツォ・フェラーリによる創業以来、フェラーリの本流はV12エンジンだ。V12はガソリンエンジンとして究極の高性能と官能性を持つが、燃費は最悪である。

間もなくガソリンエンジンそのものが禁止されようとしているご時世だ。フェラーリのSUVは、最低限プラグインハイブリッドか? と予想していたのだが、まさかこんな恐竜を積んで登場するとは。ちなみにディープなカーマニアほど電動化を憎み、恐竜を激しく愛している。