また、もし女性皇族が旧皇族の誰かと結婚するなら、男性が②の条件において皇族の養子になれば夫婦とも皇族になれるし、子供が皇位継承候補となるのにも無理がなくなる。ただ、これはたまたまそういう組み合わせが成立すれば、のことだ。
③は、いわゆる旧宮家の復活であるが、これは、②の方策では十分な数が確保できなかったときに検討すべき方策という位置づけである。
皇位継承の潜在候補は100人程度いるべき
こうして数を確保された皇族の子孫が皇位継承権を持つかどうかについては、曖昧になっている。それは、悠仁さまとその子孫の状況を見ながら将来の世代が決めればいいからだが、もし将来、悠仁さまに男子がいなければ、悠仁さまの女子やこうして確保された数人の子孫が優先的な皇位継承候補者になるということなのだろう。
ただ、悠仁さまのあとであるから、現皇族女子本人や皇族の養子候補と想定される悠仁さまと同世代の人ではなく、その子供たちが候補である。彼らは生まれながらの皇族ないし皇族の子ということになる。
この報告書の内容は、私の従前のこれまでの主張と基本的には同じ路線であり、おおむね妥当と評価している。ただ、皇位継承者の潜在候補は、100人程度はいるべきだと思う。
私はこれまでの男系男子の原則を守るように努力することを優先すべきだと考えるが、一方で、やむを得ない場合には女系も容認されることもあると考えている。
というのは、上皇陛下の4人の孫に限定してしまうと、女系でもいいとしても何世代かのうちにすべて断絶する可能性がかなり高いし、旧宮家の子孫の男系男子についても同様だからだ。だから、どちらか一方に限定すべきでないと思うのだ。
いまこそ皇室典範改正や具体的な人選を
その意味で、旧皇族だけでなく戦前に皇籍をはなれた「賜姓華族」や江戸時代に五摂家の養子になった「皇別摂家」の子孫も念のため視野に入れておくべきだ。
英国王室では、1066年にイングランドを征服したノルマン人のウィリアム1世が神武天皇的存在だが、そのうち18世紀のハノーヴァー公妃ゾフィーの子孫に王位継承権を与え、該当者は2000人ほどである。
日本では、たとえば、全容把握が容易な後陽成天皇(秀吉・家康時代の天皇)以降の男系男子子孫と、明治天皇の女系も含めた子孫くらいは、皇統譜別表のような形で公式化すべきだというのが私のかねての提案だ。
この報告に沿った皇室典範の改正や具体的な人選に安倍元首相が意欲を見せていたのだが〔拙著『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか 地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)に詳しく書いた〕、安倍元首相亡きいま、ここは岸田首相が頑張るしかないのである。とくに、若い皇族の確保において重要な役割を果たすであろう佳子さまや愛子さまの結婚まで、もう時間が残されていないからだ。