新たな変異株「BF.7」の影響も大きい

――人々が声をあげたことが大きかった、と。もう一つ、「ウイルスの変異」も要因にあげていましたが? これまで聞かなかったトピックです。

今、中国でもっとも感染が拡大しているのは北京市でしょう。対策緩和が感染者増加の要因になっていることは確かでしょうが、厳格なゼロコロナ対策を実施している段階でも感染者増加が続いていました。

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さきほど話した20カ条の緩和策を受けて、北京はPCR検査の回数を減らしていたので、統計以上に感染者は増えていた可能性も指摘されています。なぜ、ここまで一気に感染が増えたのか。実は北京市で流行している新型コロナは、オミクロン株の中でも新たに変異したBF.7であることが判明しています。

――北京日報は11月28日、北京佑安医院感染総合科主任医師の李侗(リー・トン)のコメントを報じています。BF.7はオミクロンからの派生ではもっとも伝染性が高く、また潜伏期間が短い。封じ込めはきわめて困難とコメントしています。

その後、北京CDC(疾病予防管理センター)もBF.7が主流であることを認めています。もっとも11月20日に北京市朝陽区に外出制限がしかれましたが、この時点でBF.7による感染爆発との噂が取り沙汰されていました。当局がこれを事実と認めるまでにはタイムラグがあり、大きく取りあげず隠蔽いんぺいしようとしていたふしがあります。

BF.7は、従来のBA.5よりも感染力が強いのが特徴です。今春の上海ロックダウンはBA.5の流行を受けてのものですが、封じ込めには2カ月以上もの時間がかかり、経済的社会的に大きなダメージをもたらしました。北京をロックダウンしてBF.7の流行を食い止めるにはさらに長期のロックダウンが必要になると思われます。

新たなウイルスも、これ以上のゼロコロナ継続は無理と判断した背景にあると考えられます。

当初は「ゼロコロナ政策」も大成功していたが…

――BF.7は日本にも入ってきたばかりのようですが、それほど感染力が高いとなると不安になりますね。もっとも上海ロックダウン以後の中国の状況を見るに、BA.5の時点でゼロコロナは無理だったのでは?

中国は2020年1月からゼロコロナ対策を始めましたが、当初は大成功しました。2020年4月から1年あまりの期間はまさに「ゼロコロナ」であり、多くの人にとって検査も隔離も無縁でウケが良かったのです。コロナで疲弊する世界を尻目に、中国政府は「西側諸国に対する中国の体制の優越性」とアピールしていました。

この成功体験が足かせになった側面は否めません。ウイルスが変異し感染力が高まり、今までと同じやり方では通用しなくなったのに、やり方を変えられなかった。台湾や香港のように、オミクロン株が流行した今年の頭の時点でゼロコロナから脱却するのが正解だったのでしょうが。