ゼロコロナ政策を転換した中国で、感染が拡大している。北京市を中心に新変異株「BF.7」に置き換わっているとの報道もある。現地の状況について、中国在住の日本人研究者が匿名を条件にインタビューに応じた。ジャーナリストの高口康太さんがリポートする――。
トルコ・イスタンブールで行われたウイグル人に対する中国の人権侵害をめぐる抗議デモで、バラバラに引き裂かれた中国の習近平国家主席の写真
写真=EPA/時事通信フォト
トルコ・イスタンブールで行われたウイグル人に対する中国の人権侵害をめぐる抗議デモで、バラバラに引き裂かれた習近平国家主席の写真=2022年12月4日

「ゼロコロナ政策」を急転換したが…

中国に“異変”が起きている。新型コロナに対する徹底した検査と隔離を柱とする厳しい対策、いわゆる「ゼロコロナ政策」を続けてきたが、11月末にゼロコロナ政策に対する抗議活動「白紙革命」が起きた後、突如対策を大きく転換。事実上、コロナ封じ込めを放棄しているのだ。

その結果、北京市など一部地域では爆発的に感染が拡大。PCR検査を縮小したこともあって公式統計での感染者数は減っているが、実際には信じられないペースで感染が拡大しているとみられる。

中国で起きている「本当の現実」を探るため、筆者は中国の有名大学に勤務する日本人研究者のX氏に問い合わせた。理系研究者であるX氏は、中国の新型コロナウイルスの状況に詳しく、これまで筆者は何度もレクチャーを受けてきた。今回、初めてインタビュー形式で記事化することになった。

ただし、X氏の氏名を明かすことはできない。中国では専門家がコロナについて発言することは政治的なリスクがある。湖北省武漢市の医師・李文亮は2019年末、未知のコロナウイルスが確認された問題について、知人の医師とチャットで意見交換したところ、「虚偽の情報をインターネットに掲載した」として訓戒処分を受けたことはよく知られている。

その後も、ゼロコロナ対策から転換の必要性があると示唆した上海の張文宏医師が、ネット世論からの猛烈なバッシングにさらされた騒ぎもあった。

実名で取材に答えることはリスクがあまりにも高いとのことで、今回は匿名インタビューとなったことをご了承いただきたい。