語学学校の成功から現代的ホテルが誕生

とりわけホストファミリーを選んだ留学生はかけがえのない経験を得られる。小さな集落でイタリア人一家と長期間一緒に生活し、地域コミュニティーの一員として過ごせるのだから。

ウルバーニアにも近代的なホテルはある。第10回で紹介した米ベンチャー学会「USASBE(ユサスビー)」の一行を受け入れた「ホテル・ブラマンテ&スパ」だ。Wi-Fiを完備しているのはもちろん、各部屋にジャグジーまで備えている。

ただし、ここに留学生は泊まらない。誰が泊まるのかと言えば、留学生の親である。自分の子どもがどんな場所で長期間過ごしているのか見学しておきたい、と思う親は少なくない。

そんなことからホテル需要が生まれ、ファッション業界関係者がブラマンテを買収して全面改修した。チェントロの成功に伴ってウルバーニア唯一の現代的ホテルが誕生したともいえる。

30歳で「第二創業」に打って出る

田舎育ちとはいっても国際的な家庭環境で育ち、イギリスのパスポートも持つパゾット。チェントロの経営をバトンタッチされるまでに豊富な海外経験を積んでいる。

まずはアメリカ。19歳でイリノイ州の名門ミリキン大学へ留学し、マーケティング専攻で2004年に卒業。その後、ロンドンに渡って英バレエ団「イングリッシュ・ナショナル・バレエ」でマーケティングを担当したり、ミラノで芸術・文化・ファッション関連のコンサルタントを手掛けたりしている。

30歳で父親からチェントロを引き継ぎ、「第二創業」に打って出た。語学学校という枠から飛び出し、グローバルな「大学ハブ」の構築を目指し始めたのだ。イタリア語とイタリア文化に加えルーラルをセールスポイントにして差別化し、世界各地の大学をつなげてネットワーク化する――これが最終的な狙いだ。

写真提供=チェントロ
チェントロ本部で留学生と一緒に

米MBA学生が地元企業をコンサルティング

新規事業の一つが母校ミリキン大との提携で2012年にスタートした「ビジネスコンサルティング」コースだ。

同コースはルーラルと密接に結び付いている。ミリキン大ビジネススクールの学生グループがウルバーニアを訪れ、地元企業に対してプレゼンをするという内容になっているのだ。

プレゼンを受けた企業の一つがTVSだ。ウルバーニアから車で20分足らずのフェルミニャーノに本社を置く老舗料理器具メーカーで、イタリアならではのデザイン性を売り物にするフライパンや鍋で知られている。