縮小している「有線放送」の現代版

サブスク以前は、これはラジオや有線が担っていた役割です。もちろん、今でもラジオでヘビーローテーションされることがヒットするか否かの大きな指標になっていますし、有線も同様です。

ただ、やはり昔ほどラジオや有線は多くの人が、常に聴いているようなものではなくなっています。それに代わるのがサブスクであり、ある意味では「有線放送」の現代版みたいなもの、と位置付けることもできるでしょう。

また、かつてはテレビもそうしたヒットを左右する媒体でしたが、日本にかんしてはこれもテン年代後半から、歌番組の枠が激減しています。現状ゴールデンタイムでは、タモリが司会を務める「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)以外は、あってもかつてのヒット曲を取り上げたりする回顧番組ばかりです。

音楽の豊かさが薄れているのではないか

こうした事実からも、日本における「音楽が耳に入る機会」というのが、10、20年前と比べて、かなり縮小してしまったということがわかります。そうすると、頼みの綱は「現代の有線放送」ことサブスクということになり、そこにハマった3大アーティストが米津・髭男・あいみょんだった、と思うわけです。

佐々木敦『増補・決定版 ニッポンの音楽』(扶桑社)

ただ、こうした売れ方に、一抹の不安を感じることも事実です。例えば、米津玄師の曲は本当によくできていて、かつポップソングとしてのひねりもあれば、ネット出自の人だけあって、自分ひとりで曲が作れる。つまり才能がある。

問題は、でもここまで同じミュージシャンの同じ曲が流行り続けなくてもいいのではないか、ということです。もちろん新しいアーティストも出てきてはいるのですが、かつてのような音楽シーンの幅広さ、豊かさというか、群雄割拠な感じが薄れてしまっているのではないかと。

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