ネットフリックスに翻弄されるNHK・民放
「広告抜き」だから番組を提供したはずなのに、いつのまにか「広告付き」で視聴者に番組が配信されていたら、話が違うじゃないか……。
動画配信サービス最大手の米ネットフリックス(ネトフリ)が11月から世界中で一斉にスタートした「広告付きプラン」に、番組を提供している日本の放送界が翻弄されている。広告付きのネット配信を禁じられているNHKは狼狽し、番組のスポンサーとネトフリの広告が競合しかねない民放は悲鳴を上げた。
だが、世界をまたにかけるネトフリにとって、日本特有の放送界の事情はささいなことのようで、いちいちかまってくれそうにない。
独善的な世界戦略を展開する巨大プラットフォームとどう付き合うか。国内でのコップの中の競争に明け暮れる放送界が、新たな難問に直面している。
NHK番組にCMが付く異常事態に
番組の冒頭にCMが流れるネトフリの「広告付きプラン」は、従来の「広告なしプラン」(月額990~1980円)より安い月額790円。「低価格で映画やドラマをお楽しみいただけます」と、日本でも11月4日にスタートした。
ネトフリの新プランは10月半ばに概要を発表していたが、NHKや民放各局に詳細を伝えたのは、サービス開始直前の11月に入ってからという。放送局にしてみれば、唐突感は否めなかった。
あわてたのがNHK。ネトフリに提供した連続テレビ小説「半分、青い。」などの番組を見ようとすると、冒頭に現れる大手企業のCMを見ないと視聴できなくなっていたのだ。
NHKは「インターネット活用業務実施基準」で、ネットの有料配信事業者に対し、「利用者に、特定の商品やサービスを推奨したり、NHKがCMを付けていると誤認させる恐れがあるとき」は、番組を提供しないと定めている。
ネトフリの「広告付きプラン」は、この禁止規定に抵触する。
このため、前田晃伸会長が「大変遺憾な状態」と強調、ネトフリに抗議し、すべてのプランでNHKの番組の配信を停止するよう求めた。