「いやでも耳に入ってくる」楽曲ベスト3
では、ここからは、テン年代後半にどのようなアーティストが世に出て、売れていたのかを振り返ってみたいと思います。
以前からそうだったのだとは思いますが、この頃から前にも増して、街を歩いている時や、飲食店などで、同じ曲が何度も耳に入ってくるようになりました。
そうした「いやでも耳に入ってくる」楽曲の中でベスト3を挙げれば、米津玄師の「Lemon」、あいみょんの「マリーゴールド」、Official髭男dismの「Pretender」になります。「Lemon」と「マリーゴールド」はどちらも2018年、「Pretender」は2019年のリリースです。
従来、ヒット曲はどれだけヒットしてもワンシーズンの中でのことに限られていました。一時集中して掛かっているけれども、次のシーズンになると違う曲に取って代わられるわけです。
サブスク時代の「スター誕生」
しかし、その定石をこの3曲は打ち破ります。米津・髭男・あいみょんは、その後もヒット曲を出し続けますが、それでもなお、この3曲はずっとチャートに残り続けました。
それはなぜかといえば、いつまで経ってもサブスクで再生され続けていたから、ということになります。リリースからかなり時間が過ぎても、それは「現行のヒット曲」とみなされることになるのです。
「Lemon」も「マリーゴールド」も「Pretender」もすごく良くできた曲で、多くの人の心を捉えるのはよくわかる。しかし、筆者が奇妙だと感じざるをえないのは、なぜこれほど同じ曲をリピートし続けるのだろうか、ということです。
これはいわばアルゴリズム的にもそうなってしまうのだと思うのですが、もうひとつ、多くの人は、音楽を「聴くために聴いてる」のではなくて「流している」という側面も指摘できると思います。そして、何度も耳にすることで、その歌は記憶され、さらに馴染みの曲になっていく。
これは、大衆的な音楽の聴かれ方と、そのことによる人気ミュージシャンの誕生という、ある意味で典型的なスター誕生の道筋でもあります。