自民党は群雄割拠の混迷期に突入した
高市氏が「安倍後継」として脚光を浴びる裏側で、稲田氏も巻き返しの機会をうかがっていたのだろう。
高市氏が閣内から「増税反対」ののろしを上げて岸田首相に反旗を翻したことは、絶好の機会となった。萩生田氏や西村氏らがしのぎを削る清和会に大人しく身を置いていても「ポスト岸田」の声はかからない。
ここで真逆の立場を鮮明にして「防衛強化、増税賛成」で岸田首相に歩調をあわせ、年末年始にも行われるかもしれない内閣改造・党役員人事で一本釣りされて「ポスト岸田」に躍り出ることを狙う戦略である。
日本政界に10年にわたって君臨した安倍氏が急逝し、自民党は群雄割拠の混迷期に突入した。安倍氏に総裁選に担がれて安倍支持層の熱狂的支持を集めた高市氏は岸田首相に閣内から反旗を翻し、高市氏に「安倍継承」の座を奪われて埋没していた稲田氏が入れ替わるように岸田首相に近づく。
安倍氏が引き立てた二人の女性政治家が交錯しながら権力闘争を仕掛ける様子は、自民党の混迷ぶりを映し出している。
最大派閥・清和会で激化する後継争い、それに乗じて清和会の支持を引き寄せ再登板の機会をうかがう菅義偉前首相、菅氏と連携して倒閣を画策する二階俊博元幹事長、さらには岸田首相の後見人として政敵の菅氏や二階氏の封じ込めを狙う麻生太郎副総裁、麻生氏を後ろ盾にポスト岸田に意欲を燃やす茂木敏充幹事長らの思惑が入り乱れ、岸田政権は視界不良の権力闘争に突入した。