岸田文雄首相の表明した「1兆円の防衛増税」について、高市早苗経済安保担当相は「総理の真意が理解できません」などと自身のツイッターで公然と反論した。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「ついに『岸田おろし』が始まった。これから自民党は戦国時代に突入することになる」という――。
閣議後、記者会見する高市早苗経済安全保障担当相=2022年12月13日午前、東京・永田町
写真=時事通信フォト
閣議後、記者会見する高市早苗経済安全保障担当相=2022年12月13日午前、東京・永田町

岸田おろしを仕掛けた高市氏の狙い

岸田文雄首相が打ち出した「1兆円の防衛増税」に対して、高市早苗・経済安全保障相(無派閥)が公然と反旗を翻した。自民党内からは最大派閥・清和会(安倍派)を中心に「防衛財源は増税ではなく国債で」と反発が広がり、岸田首相は増税方針を貫けるか正念場を迎えている。

高市氏は自民党内の「増税反対」の動きに乗じて閣内から「岸田おろし」を仕掛けた格好だ。足元から勃発した「謀反」を鎮圧できるのか、岸田政権は大揺れである。

岸田首相が敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有など防衛力を強化する財源を確保するための増税方針を発表したのは12月8日だった。

高市氏は2日後にツイッターで、普段は出席している政府与党連絡会議にこの日は呼ばれなかったことを暴露したうえで「その席で、総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました」と狼煙を上げた。さらに「賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できません」とたたみ掛けたのである。

高市早苗氏のツイッター。「反論の場も無いのかと、驚きました」と岸田首相の増税方針に異論を唱えた。

総裁選では「安倍氏の後継者」をアピール

マスコミ報道によると、首相周辺は「首相も相当なリスクをとって臨んでいる」と妥協しない構えをみせている。

自民党幹部は「高市氏の発言は辞表を出してもおかしくないくらいの話。『問題なし』とすれば、みんなせきを切ったように反対を言い出す」と述べ、高市氏の更迭を含め強い姿勢で「鎮圧」しなければ政権が崩壊しかねないとの見方を示した。