同じ9日に開かれた自民党の政調全体会議は2時間以上に及び、参加した50人超から批判が噴出して紛糾。高市氏の10日のツイートはこの流れに満を持して乗ったものだ。

 

高市早苗氏のツイート。「総理の真意が理解出来ません」と岸田首相を批判した。

高市氏が清和会を中心とした増税反対派による「倒閣運動」の旗頭として担ぎ上げられることを虎視眈々たんたんと狙っているのは間違いない。そのためには岸田首相から更迭されたほうがむしろ好都合なのだ。首相側から更迭をほのめかされて牽制されるほど「増税反対」の姿勢をむしろエスカレートさせていくだろう。

だが、清和会が高市氏を迎え入れて「ポスト岸田」に担ぐ道のりは険しい。安倍最側近だった萩生田氏は12月11日、自民党3役として19年ぶりに台湾を訪問し「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事である」という安倍氏の言葉を引用して中国を牽制した。

本命不在の安倍派が頼みの綱

さらに防衛力の抜本的な強化を進める姿勢を強調する一方、増税には慎重な立場を示し「国債償還の60年ルールを見直し、償還費をまわすことも検討に値する」とも踏み込んだ。「防衛力増強・増税反対」の安倍氏の立場を継承し、安倍支持層を引きつける戦略は高市氏と競合する。

清和会の次期会長の座を萩生田氏や西村氏らと競う世耕参院幹事長も「財源確保は責任ある姿勢として必要だが、イコール増税では絶対にない」としており、清和会が「増税反対」「ポスト岸田」の神輿として高市氏を担ぐ気配は今のところ見られない。

高市氏にとって頼みの綱は、清和会の後継争いが混迷し、ただちにポスト岸田として担ぐ「大本命」が見当たらないことだ。

萩生田氏は自らと親密な菅義偉前首相を担いで幹事長ポストを狙っているとささやかれているが、このもくろみが実現すれば萩生田氏は清和会の次期会長に頭ひとつ抜け出すことになり、西村氏や世耕氏らがすぐに乗るとは限らない。

一方、松野官房長官は「内閣の要」として岸田政権が続くほうが清和会内での主導権を握ることができる。松野氏は「防衛費の財源については総理も述べられているとおりであり、その考えは閣内でも共有されている」と強調し、増税反対の動きとは一線を画す。

西村氏も閣内から「防衛増税」に慎重論を唱えたが、経産相として法人税増税に反対する財界の意向を代弁したものだと言い逃れできる。西村氏は閣僚として岸田官邸と清和会の双方をバランスを取って好位置をキープし、清和会後継レースの主導権を握る狙いだろう。

もう一人の「安倍チルドレン」

清和会は決して一枚岩ではなく、それぞれが自らの存在感アップを狙って、てんでんばらばらに動き始めている。もうひとり「ポスト岸田」に躍り出ることを虎視眈々とうかがう政治家がいる。稲田朋美元防衛相だ。