自分にも温かい言葉をかけて
患者さん本人が、会社でのストレスや人間関係の軋轢について語りたがっているときは、しっかり耳を傾けてあげてください。上司にネチネチ言われていたのかもしれないし、同僚に仕事を押し付けられてオーバーワークだったかもしれません。溜まりに溜まったそのストレスが、話すことで少しずつ軽くなっていくものです。
このとき、患者さんから話を聞いたご家族は、
「悪化する前に、できることがあったんじゃないか」
「気づかなかった自分が、悪かったのではないか」
と、後悔し、罪悪感で押しつぶされそうになるかもしれません。
でも、考えてみてください。もし、あなたの友人の家族が心を病んでしまったとき、その友人に対して、
「あなたが気がつかなかったから病気になったんじゃないの?」
と言うでしょうか? 絶対に言いませんよね。
「あなたのせいじゃないし、きっといろんな要因が関わっているんじゃないかな」
という温かい言葉をかけるでしょう。同じ言葉を自分自身にもかけてあげてください。
子どもにはどう伝えるか
きちんと理解できるようになるまでは、隠しておいたほうがいいのでしょうか。
親御さんの病気についてお子さんにどう伝えるかは、とても難しい問題です。この質問をされたとき、私は「9歳の壁」のお話をします。
子どもの発達過程において、相手と自分自身を切り離し、客観的に物事を捉えることができるようになるのは、9歳からだといわれています。もちろん個人差はありますが、9歳以降であれば、病気の事実を無理に隠す必要はないでしょう。今起きていることをきちんと言葉を選んで説明すれば、わかってくれる可能性が高いと思います。
それに9歳にもなれば、詳しく説明されなくとも、家族が何らかの理由で苦しんでいることに気づくでしょう。精神疾患はケガと違い見た目はいつも通りですが、ずっと布団で寝ている様子だったり、反対に興奮して落ち着かない様子を目にすれば、何かが起こっているとわかります。だから、
「ちょっと疲れてるだけだよ」
などと曖昧にごまかすよりは、
「今、お父さんは病気にかかっていて、よくなるためにゆっくり休んでいるところなんだよ」
と、わかりやすい言葉で本当のことを説明してあげてください。