「自分で決めたでしょ?」で片付けられてしまう
組織の複雑な構造に加え、洗脳のプロセスも、摘発や社会的非難を免れるための一環と指摘する声もある。末端の構成員は、具体的な説明を受けないため、組織の構造や実態を把握していない。購入の経緯や、詳細なやりとりを残している人間もほとんどいない。
月15万円の商品購入を続けるため、約1000万円の借金を抱える人間もいれば、借金を重ねて信用情報を失い、クレジットカードを作れなくなった人間もいる。先述した20代の元構成員は「組織を辞めてから、ようやくことの大事さに気づく。組織にいるときは、どんなに苦しくても仲間がいるから楽しい、乗りきれると思い込んでしまう。しかしそれは幻想。皮肉にも、辞めてからの方が辛い」と苦笑する。
別の30代男性の元構成員も同様に、組織の最も狡猾な点をこう説明する。
「月15万円の商品購入や、シェアハウスの入居、正社員から契約社員への転職。すべて組織や師匠の意向に沿った行動だが、最終的には「自分で決めたでしょ?」で片付けられる。つまり組織は、強要も洗脳もしておらず、自己責任で構成員が自分で決めた、というスタンスだ。末端がこの構図に気づくのは、財産や時間などすべてを失ったときだ。そのときにはもう遅い。「自分は絶対にだまされない」と思っている人間ほど、容易に組織の手に落ちる」