地震をきっかけに複数の構成員から連絡が

そもそも、月15万円の商品購入を続けたら「経営者」になれる、という理屈も普通に考えたら通じない。組織で数年間活動した20代男性の元構成員は「それほど組織が行っている洗脳が恐ろしいということだ。若者の心の隙間に入り込み、人格や思考の全てを破壊する」と指摘する。

組織は長い時間をかけて若者に接触し、セミナーで教えを刷り込み、全国会議や師匠とのやり取りで高揚感を満たし、最後にはシェアハウスでの共同生活で、一般社会や家族のつながりを断絶させる。組織の洗脳は、体系的に行われているのだ。

記者が接した構成員も、休日はもちろん、大晦日まで連絡を取ってきた。構成員は災害や大きなニュースが発生したときにも、街中などで連絡先を交換した相手に対し、連絡するように指示を受けている。どさくさに紛れて連絡すれば、久しぶりの相手でも返事が返ってくる割合が高いからだという。実際にNからは、交流を絶った以降も連絡が相次ぎ、東京五輪の結果を伝えてくるLINEの連絡もあった。

また、2021年10月7日に千葉県北西部を震源とする地震が発生した際には、「地震大丈夫?」という連絡が届いた。ちなみに、このときは他の事業家集団の構成員とみられる男性(居酒屋を尋ねてきたので、Nとは別に記者が連絡先を交換した)からも「地震大丈夫?」と同様の連絡が届いた。

不景気やコロナ禍による不安につけこむ

元構成員の男性は「組織に入り、構成員になれば、24時間365日、友達作りのことしか考えられなくなる」と説明する。

この元構成員は、若者が組織の術中にはまる理由について「自分たちの世代は生まれてから、高度経済成長もバブルも経験していない。経験したのは、リーマンショックや東日本大震災など暗い話題ばかり。未来や将来に希望を持たずに育ってきた。そんな中で、組織のうそみたいな馬鹿げた話に興味をそそられる。そして興味本位で近づけば、洗脳をかけられる」と分析する。

また「新型コロナウイルス感染症の影響も大きい。特に地方から、進学や就職で上京してきた若者は、慣れない土地、頼れる人間がいない中で、他者と交流する場を失った。一人は寂しい。人は孤独に陥った時、誰かにすがりたくなる。そんな心の隙間に、組織はつけ込んでくる」と打ち明けた。

ウイルス感染の概念。浮遊ウイルス。
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