本人同士が望んだ結婚であれば意思は尊重されるべきだが、周囲が近親者同士をあえて夫婦にさせる風習は、夫婦と子供に一定の不利益をもたらしているとも言えそうだ。
首都は「最も汚染された都市」に…多産と貧困の悪循環
インドのとくに農村部においては、避妊の概念や少数の子供を設け十分な教育を与えるメリットが浸透していない。このため、多産と貧困にあえぐ構図が続いている。
教育の行き届かないこれらの地域で爆発した人口は都市部へと流れ込んでおり、各都市のインフラは需要に対応できていない状況だ。住居も足りず、粗末な小屋が並ぶスラム街が各地に誕生している。現地の人々の経済的状況は厳しく、ガーディアン紙によると若年層の失業率は23%を記録している。
インドにおける人口爆発は、地球環境にも一定の悪影響を与えるのではないかと懸念されている。気候変動対策のキーは人口抑制にあるとの指摘もあるなか、インドの状況は抑制とは正反対だ。少なくとも現状で「最も汚染された都市」といわれるデリーは、都市部への人口流入によりさらなる環境悪化の危機にあると言えるだろう。
もっとも、世界的な気候変動には、欧米の一部富裕層が排出する二酸化炭素が強く影響しているとの指摘もある。プライベート・ジェットの多用による温暖化ガスの排出はしばしば問題視されるところだ。
だが、同時に、いまや80億に達した世界人口の2割弱(17.4%)を占めるインドも、国全体としてもたらす影響は無視できない。ガーディアン紙は、現在インドには13億9000万人が暮らしており、これはアメリカの4倍、イギリスの20倍に相当すると指摘している。
人口増加にひそむ「不都合な真実」に目を向けるべきだ
インドに生を受けた新生児たちを責めることはできないが、人口抑制に向け、インド社会の古き習慣は見直しを迫られている。際限なく増加する人口の背後には、跡取りとしての男子のえり好み、女性の命の軽視、止まらないレイプ被害、家族計画の教育の不徹底など、複数の不合理な社会習慣が影響している。
インド政府は餓死者の存在を認めるべきであり、これが現状を正しく認識する出発点となるだろう。人口問題への取り組みにより、都市部の生活水準の向上だけでなく、世界的な環境維持の観点でも好影響が期待されている。