消費減税で立場が違っても「共闘」はできる

立憲民主、共産、社民の3党が支援する宇都宮健児氏の元に、多くの野党議員が応援に駆け付けた。「3党合意」の当事者の野田氏(当時は社会保障を立て直す国民会議代表)も、野田氏に反発して民主党を割った小沢氏(当時は国民民主党)も、共に宇都宮氏の応援演説に立った。今回の問題の発端となった枝野氏も、応援のマイクを握っている。

都知事選で野田氏が宇都宮氏の応援に駆け付けた場面は、11月1日公開の記事(なぜ野田元首相は「いまの立憲の顔」ではないのか…あれだけの演説の名人が干される残念すぎる力学)でも紹介したが、消費減税に慎重な構えの野田氏を応援演説に誘ったのは、消費減税を訴える共産党の志位和夫委員長だった。同党の小池晃書記局長はツイッターで「こちらの政策を押し付けて『一致しなかったら共闘はやらない』という態度はとらない」との姿勢を強調した。

消費減税積極派と慎重派の「共闘」が成立したのだ。

この選挙には、消費減税を強く主張するれいわ新選組の山本太郎代表も出馬したが、同じように減税を掲げる共産党や社民党が、山本氏に引き寄せられることはなかった。選挙結果は宇都宮氏が84万票余りを獲得。山本氏は65万票余りにとどまり、宇都宮氏の得票に及ばなかった。

あの都知事選が示したのは「野党は消費減税さえ唱えていれば選挙で有利になる」という俗説が、ただの幻想に過ぎなかった、ということだ。消費税は「共に自民党政権と戦うためには、一致できなくても脇に置いておける存在」になった。そのはずだった。

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「消費減税を言わずんば野党にあらず」という刷り込み

にもかかわらず、政治は結局、その事実から目を背けようとした。メディアも、少なからぬ野党支持者も、都知事選の後も野党各党に、消費減税を強く求め続けた。

立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党は、衆院選を目前にした昨年9月、衆院選での共通政策に合意した。安全保障法制の廃止を唱える「市民連合」の政策提言に合意したのだ。提言は「憲法に基づく政治の回復」「科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化」など6項目からなり、消費減税は「格差と貧困を是正する」という項目の中に、地味に一言書かれているだけだったが、それでも結局、多くのメディアが「消費減税」を見出しにとった。

「消費減税を言わないのは野党ではない」。この刷り込みの強さを、筆者は改めて思い知らされた。