メタバース界の中心になっている「ある企業」
30年にわたり、グラフィックスベースのコンピューティングに特化して成長してきたNVIDIAのことも忘れてはいけない。
NVIDIAは、インテルやAMDといったプロセッサーやチップの大手と並び、増えていくコンピュート需要の恩恵を手にすることになる。アマゾンやグーグル、マイクロソフトなどのデータセンターはもちろん、我々が手にする機器も、このような企業が提供するハイエンドのGPUやCPUを使っているからだ。
だが、NVIDIAは、もっと大きなことを考えている。いま、NVIDIAの『GeForce Now』は、ゲームストリーミングのクラウドサービスで2番手につけている。そのシェアはソニーに対しても数倍、アマゾンのルナやグーグルのステイディアに対してはけた違い、リーダーであるマイクロソフトに対しても半分ほどだ。
また、異なるエンジンやオブジェクト、シミュレーションの相互運用性を高める3D規格を推進するプラットフォーム、オムニバースは、「デジタルツイン」や現実世界において『ロブロックス』的なものとなれる可能性を秘めている。
NVIDIAブランドのヘッドセットやNVIDIAがパブリッシャーのゲームが登場することはないかもしれないが、少なくとも2022年のいま現在、NVIDIAがかなりの部分を支えるメタバースに住むことになりそうな感じがするのはまちがいない。
まだ影も形もない企業が出てくる
このようなとき、業界リーダー各社は未来に対応する準備が整っているように見えてしまうという問題がある。当たり前だろう。お金も技術も、ユーザーも、エンジニアも、特許も、コネも、なにもかも潤沢なのだから。
それでもなお、いや、そういう強みを持つがゆえに(強みに足を引っぱられることも少なくない)、つまずくところが出てくるのは、歴史が示すとおりだ。
しばらくすれば、いまは小さすぎたりたまたま著者の目にとまっていなかったりで本書に取りあげていないところがあちこち、メタバースのリーダーに名前を連ねているはずだ。それこそ、まだ影も形もないところもあったりするだろう。
いまは『ロブロックス』ネイティブの世代が大人になりかけている時代であり、同時接続ユーザー数千人、数万人のゲームやブロックチェーンベースのIVWPを作るのはシリコンバレーではなく、彼らであるはずだからだ。
ウェブ3という考え方に共感した、兆ドル規模とも言われるメタバースの市場規模に惹かれた、あるいは、規制によってGAFAMに買ってもらえなかったなど、経緯はいろいろとあり得るが、とにかく、GAFAM5社のどこかに取って代わるところが育つであろうことはまちがいない。