*本稿では「メタバース」と区別するため、「メタ社」を「フェイスブック」と表記しています。
メタバース時代に最ものめりこんでいる企業
GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)のうちメタバース時代をリードするのはどこなのだろうか。
フェイスブックはモバイルへの移行にうまく対応した。2012年にマーク・ザッカーバーグがインスタグラムを10億ドルで買ったのは、わりとすぐに、デジタル時代有数の賢い買い物だったと言われるようになった。
買収当時、インスタグラムは社員も10人ほどなら月間アクティブユーザーもようやく2500万人というレベルで、売上はまったく上がっていなかった。それがわずか10年で5000億ドル以上もの評価価値を持つようになったのだ。
インスタグラムの2年後にはユーザー数7億人のワッツアップも買っていて、200億ドルなら同じように格安の買い物だと言われた。いまは両方とも、賢すぎる買い物だった、独占禁止法上、国が却下すべき買収だったとまで言われているほどだ。
では、もう一度、変革に成功できるのだろうか。メタバース計画の基礎もオキュラスVRやCTRLラボの買収で形にしたわけだが、今後はそうした買収に規制当局が厳しい目を向けそうだ。サービスの大半が依存するハードウェアベースのプラットフォームという戦略的障害もあるし、社会的な評価がかつてないほどネガティブになってもいる。
それでも、フェイスブックはあなどれない。なにせ月間ユーザー数が30億人、1日あたり20億人と世界一よく使われているオンラインアイデンティティのシステムを持つのだから。メタバース関連に年120億ドルも支出しているし(ちなみに売上は1000億ドル近く、キャッシュフローも年500億ドル以上に達している)、VRハードウェアについては何年も先行できている。そして、経営している創業者は企業経営者のなかでもこれほどメタバースに入れ込んでいる人はいないというほど入れ込んでいるのだ。
全く展開できていないグーグル
次にグーグルを見てみよう。
グーグルは「世界の情報を整理し、そこに誰でもアクセスできるようにする」をミッションに掲げているが、仮想世界の情報にはほとんどアクセスできないし、それを活用するなど夢のまた夢である。
自社では仮想世界も展開できていないし、仮想世界のプラットフォームもエンジンも持っていない。
2016年にはゲームストリーミングのクラウドサービス、『ステイディア』を提供しようと準備を始め、2019年末にはリリースにこぎ着けたし、同年、ステイディアゲームとエンターテイメント部門を「クラウドネイティブ」なコンテンツスタジオにすると発表してもいる。だがそれも2021年には閉鎖となり、ステイディア関係の人々は、トップ以下、グーグル内の他グループに異動するか退職するかしてしまっている。メタバースへの取り組みはあまり進んでいないと考えていいだろう。