クラウドサービスで安泰なアマゾン

メタバースに一番入れ込んでいるのはフェイスブック、一番後れを取っているのはグーグルで、その中間にいるのがアマゾンだろう。

メタバースは、コンピューティングパワー、データストレージ、ライブサービスに大きな負荷をかけることになる。つまり、クラウドインフラ市場の3分の1近くを占めているアマゾンウェブサービス(AWS)は、今後の成長を他社にかなり持っていかれたとしても、相当の利益を得ることができるわけだ。

コンテンツ作りには消極的

ちなみにアマゾンもメタバース向けのコンテンツやサービスを作ろうとしてはいるが成功しているとは言いがたいし、音楽やポッドキャスト、動画、ファストファッション、デジタルアシスタントといった従来型市場に比べて優先順位が低いようだ。

各種報道によると、アマゾンは、創業者ジェフ・ベゾスが言う「コンピューター的にとほうもないゲーム」を作るため、毎年何億ドルもの予算をアマゾンゲームスタジオに投じているという。だがゲームのほとんどはリリースできず打ち切りになっている(基本的に、ヒット作のライフタイム予算以上に開発費がかかると打ち切りになる)。

もちろん、この先、いろいろとヒット作が出てきたりもするのだろうが、アマゾンミュージックやプライム・ビデオに合計で年間何十億ドルも支出していることを見れば(ハリウッドのMGMスタジオも85億ドルで買収している)、ゲームに力を入れていないのはあきらかだ。テレビドラマ『ロード・オブ・ザ・リング』の1年分だけで、ゲームスタジオの年間予算を超えるという報道もある。

ゲームエンジンの開発はどうだろう。ゲーム『ファークライ』を開発したクライテックからそれなりのゲームエンジンであるクライエンジンのライセンスを取得。その後数年、数億ドルを投じて改良を施し、完成したのがランバーヤードだ。

AWSに最適化されたゲームエンジンで、アンリアルやユニティのライバルになることが期待された。だが利用は広がらず、2021年、開発がリナックスファウンデーションに引き継がれ、無償のオープンソース、「オープン3Dエンジン」として提供されることになった。ARやVRのハードウェアはそれなりに成功しているが、リアルタイムレンダリング、ゲーム制作、ゲーム配信については、いまのところ失敗続きと言っていいだろう。