ソフトでなくハードウェアで勝負のアップル

アップルも、メタバースの恩恵を確実に受ける1社である。

規制でサービスのバンドルが禁じられる事態になっても、アップルのハードウェアやオペレーティングシステム、アプリプラットフォームが仮想世界の入口として重要な役割を果たすであろうことは変わらないし、それが利益率の高い事業になることもまちがいなければ、技術規格やビジネスモデルに大きな影響を与えるであろうこともまちがいない。

アップルはまた、軽量・高性能で使いやすいARヘッドセットやVRヘッドセットといったウエアラブル機器の開発には一番有利な立場にある。iPhoneを活用するなどの方法もあるだろう。

『ロブロックス』のような統合仮想世界プラットフォーム(IVWP)があれば仮想世界のユーザーやディベロッパーともつながれるはずだが、IVWPを開発しているという話は聞かない。アップルという会社はゲーム関連のノウハウを持たないし、そもそも、ソフトウェアやネットワークよりハードウェアが中心であることを考えると、人気IVWPの開発は難しいとも思われる。

マイクロソフトに注目すべき理由

メタバース時代に注目すべきGAFAMは、モバイルへの移行に乗り損ねたマイクロソフトかもしれない。

マイクロソフト本社
写真=iStock.com/lcva2
※写真はイメージです

Xboxを世に送り出した2001年、投資家はもちろん社内からも、ゲーム部門は必要なのか、むしろないほうがいいのではないかと疑問の声が上がった。

対して創業者であるビル・ゲイツ会長は、CEOがスティーブ・バルマーからサティア・ナデラに代替わりした3カ月後、「ナデラがXboxをスピンオフすると言うなら自分はそれを心から支持する。ただし今後はゲーム戦略が不可欠になるので、どうすべきかは意外に難しい」と表明している。

そして、ナデラはマインクラフトの買収を決断。数十億ドル規模の大型買収だ。しかも、提供プラットフォームをXboxとウィンドウズに限定しなかった(Xboxやウィンドウズなら一段よくなるようにもしなかった)。いまなら当たり前に思えるが当時はあり得ないと言われていた考え方である。

この方針が功を奏し、『マインクラフト』はユーザー数が買収当時の月間2500万人から1億5000万人へと6倍にも増え、世界で2番目に人気の高いリアルタイムレンダリング3D仮想世界となった。