プレステ専用のメタバース

ソニーのゲームはプレイステーション専用ばかりで、SIEも、モバイルやクロスプラットフォーム、マルチプレイヤーのゲームでヒットを飛ばした実績がほとんどない。

ゲームのハードウェアやコンテンツには強いが、オンラインサービスへの対応は鈍いし、コンピュートやネットワーキングインフラ、バーチャルプロダクションをリードする立場にもない。日本は半導体に強い国であるにもかかわらず、有力と目される企業は出ていない。つまりソニーがメタバースに舵を切る際には、おそらく、GAFAMのサービスや製品を使わざるをえないわけだ。

ソニーは、2020年、ドリームズをリリースした。パワフルなIVWPでプロが制作したゲームが多数用意されていたにもかかわらず、ユーザーもディベロッパーもあまり惹きつけることができなかった。

これはUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームの経験不足が原因で、ドリームズは最初から失敗が約束されていたというのが大方の見方だ。

IVWPは基本プレイ無料が普通なのに、ドリームズは最初に40ドルもかかる。ディベロッパーに売上の一部を還元する仕組みもない。また、ほかのIVWPはさまざまな機器で遊べるのに、ドリームズはプレイステーション専用だった。

くり返される機会損失

GAFAMに比べると、ソニーはユーザー数も少ないし、エンジニアの数も少ない。研究開発費もGAFAMならせいぜい数カ月分か下手すれば数週間分が年間予算だ。そのせいか、ソニーは、機会損失をくり返してきたことで知られている。

たとえば、ウォークマンでポータブルな音楽デバイスの世界市場をリードしていたし、世界第2位の音楽レーベルも傘下に持っていたというのに、デジタル音楽という革命を起こしたのはアップルだった。

消費者家電にもスマートフォンにもゲームにも強いのに携帯電話事業では競り負けているし、スマートテレビでは波に乗り遅れている。また、ハリウッド大手のなかで唯一、従来型テレビを守る必要もなく、また、ネットフリックスがDVDレンタルからストリーミングに転換するのと同時期にストリーミングサービスのクラックルを立ち上げたにもかかわらず、成果を挙げられていない。

今後、メタバースで異彩を放つには、技術革新に加え、もともと横のつながりを強みとする会社に、とっても難しいレベルで部門間の協力を実現しなければならない。

また、いま、プレイステーションをはじめソニーのエコシステムはいずれも自社製品のみでかっちり組み上げられているが、今後はそういう縛りをなくし、サードパーティーのプラットフォームにも対応しなければならない。