依拠性、同一性・類似性が認められるかどうか

複製・翻案の要件のポイントは、①依拠性と②同一性・類似性の2点です。

依拠性

複製にせよ翻案にせよ、ともになんらかの既存の著作物を元に制作する行為です。つまり、既存の著作物を元にしていることじたいが要件の一つです。これを「依拠性」と言います。

他人の著作物と似ている著作物を偶然創作してしまうことも起こりえますが、本当に偶然似てしまっただけで、他人の著作物を元にしたわけでなければ、依拠性は否定され、複製・翻案にはあたりません。

なお、直接依拠したのが二次的著作物である場合は、その二次的著作物の原著作物にも依拠したものと評価されます。

写真=iStock.com/JannHuizenga
※写真はイメージです

単に「似ている」ことだけが問題ではない

しかし、元にした著作物があるなら、常に複製・翻案にあたるとは限りません。1枚の線画を複製する場合を考えてみましょう。その方法には、次の5つの方法が考えられるとします。

(1)コピー機で複写する
(2)トレース台を使ってトレースする
(3)絵の上手なイラストレーターが線画を見ながら描き写す
(4)絵心のない筆者が線画を見ながら描き写す
(5)絵心のない筆者が一度見た線画を思い出しながら描く

(1)と(2)が複製にあたることには間違いはなさそうです。

(3)も、元の線画とほとんど同じものができるでしょうから、複製にあたりそうです。

他方で、(4)は、筆者の頑張りしだいで一応は元の線画と似たようなものにはなりそうですが、(5)に至っては、元の線画とは似ても似つかないものになるでしょう。

では、この(4)や(5)のような場合にも、既存の線画を元にして再現しようとしている以上は、複製にあたると言えるでしょうか?

複製・翻案と言えるには、単に似ているというだけでなく、なにがどの程度“似ている”必要があるのか、というのが同一性・類似性の問題です。