遺産の取り分に対する不満、決着のつかない話し合い、こじれる家族仲……。とかく泥沼にハマりやすい相続問題。傾向とルールを知り、対策を立てよう。

ケース1 親が亡くなった後、知らない兄弟姉妹の存在を知った

相続手続きを進めるためには、誰が相続人なのかを明らかにする必要がある。そのため、相続が発生したときにはまず、被相続人(相続財産を遺して亡くなった人)の戸籍謄本を取り寄せ、血族関係を調べなければならない。その作業中、家族が知らなかった被相続人の子が見つかった――というのは、再婚が増えた現代においてよくあるケースだという。

相続人の範囲は法律で決まっており、被相続人の配偶者と血族がその対象になる。相続問題に詳しい弁護士の森公任氏は「被相続人の子の異母兄弟も、第1順位の相続人としての権利を持ちます」と説明する。

「離婚・再婚が増えたなかで、過去の離婚歴を新しい家族に話していないということもあるでしょう。法的な婚姻関係がない2人の間に生まれたいわゆる婚外子も、父親が認知した場合は戸籍に記載され、遺産相続においては婚姻関係にある夫婦から生まれた子と同等の権利が認められます」

こうした異母兄弟がいた場合、必ず連絡をつけ、遺産分割のプロセスに加わってもらわなくてはならない。被相続人の遺言書がない場合に行う遺産分割協議では、相続人全員の参加と合意が必要になるからだ。連絡先がわからない相続人がいるときは、被相続人や相続人の戸籍の附票などをたどって現在の住所を探すことになる。

「一方、相続人の配偶者などは相続人ではないので、相続についての法的な権利は何もありません。パワハラ傾向のある夫や主張の強い妻など、相続人の配偶者が口を挟んできて相続で揉めるケースは多いのですが、基本的に話を聞く必要はないし、調停や審判の場では同席すら認められません」(森氏)

被相続人が生前、前妻の子や婚外子に「生活援助はするから、自分が死んだときには相続人として名乗り出ないように」と約束させている場合もある。しかし、口頭であれ念書のような書面であれ、被相続人の生前に行われた相続放棄は無効と判断される。

配偶者は常に相続人になる。それ以外の親族は順位が定められており、上の順位の者がいるときは下の順位の者に相続権はないとされている。子が死亡・相続権を失ったときは孫、父母が死亡・相続権を失ったときは祖父母が相続人になる。

相続人が2人以上いる場合は、被相続人の遺産をどう分けるかが問題になる。相続分は法定相続分が原則。遺言書がある場合は、法定相続分と関係なく、その遺言書で割り振られた通りに分割される。遺言書がない場合は相続人間で協議するが、法定相続分に従って割り振りを決めることが多い。協議や調停で解決できないときは、裁判官が相続分に従って遺産を分割する。生前に被相続人から特別な多額の利益を受けていたり、被相続人の財産形成に特別な寄与があれば、それを考慮した具体的相続分を基準に分割する。

前述の通り、異母兄弟は被相続人の子として、第1順位の相続人としての権利を持つ。したがって、法定相続分に従う場合には、異母兄弟も含めた被相続人の子全員が、子の相続分を平等に分け合うことになる。

【図表2】遺言がない場合、遺産はどう分けるか

相続分とは、相続人が2人以上いる場合における各人の取り分のこと。遺言がない場合は民法で定められた法定相続分に従うのが原則。子、父母、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは均等に分ける。