竜巻を起こすことで会社を活性化させる

吉本のプラットフォームは、あと5年ぐらいでモバイルに集約されていく予感はあります。だから今後は芸人や番組が集結するような動画配信サービスにも力を入れていく。今のところ、テレビの放送局からいただくお金が約6割ぐらいの感覚で、デジタルビジネスの収益は上がっていません。とはいえメディアの世界は、ある日を境に劇的に変化することがある。われわれは媒体を一つに絞る必要はないので、数人の女の子と同時につきあいながら、この子もええし、あの子もええしで様子を見たい。会ってるときは「今日はおまえが一番」の姿勢です(笑)。所属してる芸人が多いので、新しいメディアができても、それなりに対応はできるんじゃないかなと。

これからも社長として組織を引っ張っていかないといけないんですが、リーダーの指針らしい指針を持ってないんですよ。そういうことに僕は向いてないので。そもそも吉本は役所や銀行とは対極にある、組織論が通じないアメーバのような会社。成長するときも階段を一段ずつステップアップするのではなく、竜巻のようにグチャグチャになって、上がったり下がったりしていくのが吉本らしい経営である気がします。

竜巻を起こすには、異質なものを放り込んでいったらいいんです。昨日までダウンタウンのマネージャーだった社員が突然経理部長になったり、逆に旧態依然としたお笑いスタッフの中に経理のプロに来ていただいたり。そうなると旧体制は異質な血に慣れてないから軋轢が起きるし、外から来た人も戸惑って辞めるし。そこでだんだん落ち着いて形になったかなと思ったら、また放り込んで……を繰り返す。竜巻が起こってるほうが組織が硬直化せず、会社は活性化するんじゃないですかね。そのダイナミズムこそがお笑いに必要な「時代の空気を吸う」ことなんだろうし、またそこから次の100年につながるものが生まれればいい、と僕は思うんです。

※すべて雑誌掲載当時

(鈴木 工=構成)