子どもには見せられないオーディション動画
そして「BreakingDown」が急激に話題性をアップしたのは、オーディション動画の人気爆発によるところが大きかった。
無名のアウトローや貧困などの苦境にあえぐ人が、一発逆転成功を狙ってオーディションに参加し、決死のアピールでチャンスをつかみ取り、わずか1分の試合で勝ち、自分の居場所を作る。さらに勝ち続けることで、SNSやYouTubeでの人気者になっていく……。
「罵倒合戦や乱闘は当たり前」のオーディションが動画配信されるようになり、この人間ドラマをよりディープに描けるようになった。そのイメージはヤンキー漫画の実写版のようであり、かつてTBSが放送していた『ガチンコ!』のようにも見える。現在の番組で言えば、「無名の人々による人間ドラマ」という意味で同じTBSの「SASUKE」に似たニュアンスがあるかもしれない。
その人間ドラマは、人間の業や愚かさを露悪的に切り取るスタイルが主流であり、「子どもには見せられない」ものが大半を占めている。
試合は「おまけ」、メインはオーディション
実際、オーディション募集要項の“注意事項”に「選手として決定した方には、大会出場前にアタックムービー(いわゆるあおり動画)の撮影のご協力をお願いする場合がございます」という記述や、“選手専用エントリーフォーム”に「経験・実績」だけでなく「前科歴」という項目があった。
オーディションやアタックムービーは茶番にも見えるし、学びはほとんどないが、その悪さがあるからこそ「ついのぞき見したくなる」のではないか。
見る人が「自分もやってみたい」と思うか、「推し」を見つけて応援するか。熱狂や感情移入の仕方はそれぞれだが、試合を「おまけ」と言い切る人もいるほど、オーディションの重要度が増しているのは確かだ。
実際、オーディションをYouTubeで動画公開しはじめてからネット上が盛り上がり、「BreakingDown6のオーディションVol.4」は1100万回再生を突破している。それ以外でも、試合前後の対談動画などが軒並み200万回再生以上を超えていることも含め、「格闘技イベントでありながら試合の重要性がいい意味で低い」ことが最大の特徴と言えるのかもしれない。