「格闘技ごっこ」「地下格闘技の劣化版」などの批判も
話題性では、「すでにネットコンテンツ屈指」と言ってもいいだろう格闘技イベント「BreakingDown」。
発起人であり、スペシャルアドバイザーを務める総合格闘家・朝倉未来のYouTubeチャンネルはYouTubeの全動画最高レベルの再生数を誇る。また、大会のPPV(ペイ・パー・ビュー)の視聴人数も右肩上がりという。
一方で、武尊や青木真也ら人気格闘家たちが賛否の声を上げているほか、お騒がせ人物が次々に参戦したり、試合前の流血負傷トラブルが起きたり、出場者への誹謗中傷が加熱したりなど、連日さまざまな話題を提供し、「社会現象か」という声も聞こえてくる。
確かに「1分1ラウンドで最強を決める」というコンセプトは斬新であるとともに、「映画やドラマを倍速視聴し、楽曲のイントロすら避ける」ほどせっかちになった現代人にフィット。「格闘技ごっこ」「地下格闘技の劣化版」などの批判はあるが、「格闘技や格闘家のありきたりなイメージを壊し続ける」という狙いが当たっているからこそライト層を引きつけているのだろう。
では「BreakingDown」の何が人々をそこまで引きつけているのか。また、いまだ「一過性のものだろう」「いつまで持つのか」と突き放す声が多い理由は何なのか。
格闘技の素人でも楽しめる設定
ここまで反響が大きくなっている以上、人々を引きつけている理由は1つではないのだろう。
まずベースの部分として挙げておかなければいけないのは、駆け引きなどがほぼ排除された1分間の戦いは、単刀直入であるとともに、ルールの理解や格闘技知識が不要であること。この間口の広さはネット上でライト層をつかむ上で大きく、「BreakingDown」が既存の格闘技イベントに話題性で勝っている理由の1つだ。
しかもコアな格闘技ファンなら「1分では物足りない」となるところだが、「BreakingDown」には試合以上の楽しみがある。それは、成り上がりを狙う野心むきだしの姿、わずか1分で結果が出る明暗……。そこにエンタメ性とリアリティーが漂っている。
特に若年層ほど、「テレビは構成・演出が予定調和で面白くない。どうせ編集して無難にまとめるのだろう」などと思っているだけに、「BreakingDown」に引きつけられるのではないか。
また、出場者たちの中には、「コンプライアンスを求められるテレビには出ないアウトローたちが次々に登場して、本気の殴り合いを見せる」という希少さもある。実際、出場者は必ずしも「強ければ人気がある」というわけではなく、キャラクターやプレゼンによるところが大きい。さらに「キャラ設定に失敗している人を見て楽しむ」という見方の人すらいるなど、一流の格闘家ではないからこそ楽しめるところがあるのだろう。