試合自体は極めてクリーン

もう1つ特筆すべきは、リスク管理を含めたバランス感覚の良さ。1分という設定は「現代人に合う単刀直入さがある」というだけでなく、「危険性を下げる」という意味でもバランスの良さを感じさせられる。

「応募資格 全人類」であり格闘技の素人でも参戦できるが、安全対策やルール設定などは万全。試合前のドクターチェックやルール講習が徹底されているほか、オープンフィンガーグローブ、ニーパッド、ファウルカップなどの規定は細部にわたる、さらに、頭突き、肘打ち、頭部膝打ち、後頭部打撃、グラウンドでの足打撃、ヒールホールドなどの反則行為にも厳格で、さらに「試合場内で口汚い言葉を吐く」ことも反則という。

つまり、オーディションの罵倒合戦や乱闘は目をそらしたくなるほどだが、クリーンな試合が期待できるということ。1分なら格闘技未経験者でもスタミナ切れせず、それなりに試合を成立させられるなど、そのコンセプトはやはりバランスがいい。

オクタゴンリングで戦う総合格闘技の選手二人
写真=iStock.com/janiecbros
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テレビ業界がうらやむワケ

そんな「BreakingDown」に対するテレビ業界の評価は想像以上に高かった。

テレビマンたちが「格闘技ごっこ」「地下格闘技の劣化版」などと一蹴できないのは、まずネット広告やスポンサーの獲得、PPV集客などの収益化に成功しているから。配信収入などのマネタイズがうまく進まず、視聴率の低下で落ちた放送収入をカバーできていないテレビ業界にとってはうらやましいところがあるのだろう。

また、「BreakingDown」のオーディションやあおり動画には、『ガチンコ』を彷彿させるような演出が見られる。これはテレビを踏襲した上で、ネットコンテンツ仕様にエスカレートさせた感があり、「アンチも巻き込んでムーブメントを生み出そう」という確信犯的プロデュース。「批判したくてたまらない人もけっきょく見ている」という状態は、テレビ業界から見たら「うまい」と言わざるを得ないものがあるのだ。