深刻化する誹謗中傷
では、なぜ批判の声がやまないのか。ネット上のコメントを一つひとつ見ていくと、「くだらない」「茶番だ」などの感覚によるものではなく、正論のような声が目立つ。
「『不良の受け皿になっている』という意義はわかるが、格闘技や格闘家のイメージダウン」
「金儲けのために格闘技と暴力のボーダーをなくすのはよくない」
「対立をあおるのは良しとするにしても、もっと練習させないと重傷者が出るリスクがある」
「YouTubeで一般公開すると子どもの目にふれて、ごっこ遊びのケガやイジメにつながる」
どれもすぐに「BreakingDown」の勢いをそぐほどの説得力はないが、象徴的なのは、既存の格闘技イベントと比べて、技術レベルや見応え以外のところを批判していること。
そもそも「純粋な格闘技イベントとして見るのは無理があり、技術レベルや見応えが劣るのは当然」とみなす人が多いのだろう。ならば、既存の格闘技イベントを貶めるものではなく、収益性以外の部分では、むしろ相対的な好評価を得られるチャンスなのかもしれない。
「BreakingDown」が抱える本当の問題点
本当の問題はここに挙げたイメージダウン、ケガ、イジメなどより、目先の利益を得るために、個人が消費される形の演出かもしれない。
現状、「BreakingDown」での活躍で世間的な成功を収めている人はいない反面、誹謗中傷問題が深刻化している。たとえば、「誹謗中傷が原因で命を落とす」など最悪の事態が起きても不思議ではない。
終始、「叩かれることもエンタメ」「すべて自己責任」というムードが漂い、個人が消費されるような現状に危うさを感じさせられる。
さらにその消費は出場者だけの問題だけでなく、見ている人々にも「もうこういうのは見なくていいかな」という気疲れを感じさせるかもしれない。
このあたりを放置せず改善していかなければ、「慣れた」から「飽きた」に変わるタイミングが早いのではないか。いずれにしても運営側の手腕が鍵を握っている。