プロ野球選手は試合中どんなことを話しているのか。元プロ野球選手の今浪隆博さんは「独特の業界用語を使っている。例えば、『ヤリ』という言葉は、ストレートにめっぽう強いバッターを意味する」という――。(第2回)

※本稿は、今浪隆博『今浪隆博のスポーツメンタルTV THE BOOK 野球観戦が100倍面白くなる厳選100談義』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

ゴロを捕球するヤクルトの遊撃手・今浪隆博=2015年6月6日、神宮球場
写真=時事通信フォト
ゴロを捕球するヤクルトの遊撃手・今浪隆博(当時)=2015年6月6日、神宮球場

プロ野球の「守備と走塁にはスランプなし」はウソ

「打線は水物」「守備と走塁にスランプなし」。これも野球界でよく使われる言葉です。

打線が水物に関しては、その通りで、前日にどれだけ大量得点しても、翌日、相手ピッチャーの出来がよければ、あっさり沈黙してしまうことは、よくあります。

「守備と走塁にスランプなし」も、多くの人が「確かに」と納得するかもしれません。でもぼくに言わせると「いやいや、そんなことない。守備と走塁にもスランプはあんねん」です。

走塁、特に盗塁の場合、1回失敗すると、盗塁のスペシャリストでも恐怖心から反応が鈍くなると聞かされたことがあります。ピッチャーがホームに投げるのか、牽制をするのかを素早く見抜き、どれだけ速く反応するかが盗塁成功のポイントなので、それが鈍くなるのはスランプともいえるでしょう。

ぼくの場合、プロ11年間で1軍の盗塁成功4つ、失敗3つで、とても語れる立場にはいないので、これは盗塁がうまい人から聞いた話です。守備に関しては、自分でもたっぷり経験しているため、はっきり言えます。スランプは、あります。

エラーの直後だったり、「守りにくい」という先入観がある球場だったりすると、バウンドをうまく合わせられないことがあります。普通にプレーしているつもりなのに、大胆に前に出ていけない、足が止まってしまう……。まわりからは普通にさばいているように見えていても、本人はハラハラ、ドキドキです。逆に、ゾーンに入っている状態では、どんな打球でも体が自然に反応して、簡単にさばけてしまいます。

守備にも、走塁にも好不調の波はあるものです。守備、走塁にスランプはないという人は、守備より打撃を重視していた人、盗塁、走塁にあまり興味がない人が多いような気がします……。