ところが、データ修正後の同8月22〜28日の数値を見ると、未接種よりも2回目接種済み(3回目接種済みを除く)、3回目接種済みのほうが、新規陽性者数が多い年代も散見されます。たとえば、30代では、未接種の760.6人に対して、2回目接種済み(3回目接種済みを除く)では961.5人、3回目接種済みでは825.2人と、いずれも多くなっています。なお、新型コロナ感染者の全数届け出が見直されたのに伴って、厚労省は8月22〜28日以降の分から公表をしていません。

「官僚は頭がいい」は幻想だった

実は、新型コロナの場合、ワクチンを打った人のほうが打たなかった人よりも「感染しやすい」という現象は21年からすでに英国などで報告され、「新型コロナワクチンに感染予防効果はない」ということが、各国で示されていました。それにもかかわらず、厚労省は「ワクチンには感染予防効果が期待できる」と主張し続け、ワクチン接種を推奨してきました。厚労省は今回の未接種陽性者水増しについて、「意図的なものではなく、数字の処理ミスだった」としましたが、私はミスに気づいていながら、「ワクチン接種を推奨する自分たちにとって都合のいいデータ」なので、「見て見ぬふり」を決め込んでいたのではないかと疑っています。

私は、東京大学大学院で数学や自然科学を学んだ後、06年に「キャリア官僚」として厚労省に入りました。ウイルスなどの病原体や危険な化学物質に対する安全衛生政策の企画などを手がけました。アスベストの飛散防止対策の策定、健康管理手帳の交付、労働者の死因や疾病に関する統計を作成・分析する業務に携わったこともあります。

そうしたなか、厚労省が数字の処理ミスや不正処理を発生させやすい、構造的な問題を抱えていることに気づきました。情報処理や統計の専門的な知見、ノウハウを持った職員が少なく、そうした人材を育成する省内の研修制度も十分ではありません。職員の採用や配置は、知識や能力ではなく、「協調性」などで決められることが多く、データの取り扱いに不慣れな職員が、統計業務を担当していることもあります。

私自身、PCが苦手な前任者から仕事のデータを引き継いだところ、どのデータが正しいのかわからず、途方に暮れた経験があります。今回の未接種陽性者水増しも、起こるべくして起こったといえるでしょう。このように、政府の公表データのなかにも処理に失敗したり、不正に処理されたりした数字が交じっているので注意しましょう。