早く会議が終わった場合は参加者に礼を言う

“10 minutes back (to you).”

「10分をあなたにお返しします」という意味。外資系企業のマネージャーや、欧米のビジネスパーソンがたびたび発する定型フレーズです。私もグローバル企業に勤務していた時、ロサンゼルスやパリのマネージャーから何度もこのフレーズを聞きました。たとえば、1時間を予定していた会議が50分で結論が出て終了したとき、このひと言で時間を相手に戻します。

このフレーズは、メンバーの時間に対する意識を変えます。

「相手の時間を奪わない」
「会議を予定時刻より早く終えるのはいいことである」

この認識が浸透すると、スムーズかつ効率のいい進行に意識が向きますし、コミュニケーション手段そのものを疑って改めるようになります(対面ではなくオンラインミーティングでおこなう、チャットで済ますなど)。そうして、組織カルチャーが変わってきます。

「皆さんのおかげで予定より早く進行できました」

ファシリテーターは、できればものごとが予定より早くスムーズに終わった事実に、感謝のひと言を添えましょう。その際、どんな行動がよかったのかをつけ足すとなおいいです。たとえば、2時間の会議が、1時間30分で終わったとしましょう。

沢渡あまね『話が進む仕切り方』(技術評論社)

「みなさんの活発なアイデア出しのおかげで、予定より30分早く進行することができました。ありがとうございました」

このように伝えると、一体感を高めることができますし、メンバーの「自分も場を共に創る一員である」当事者意識が高まり、メンバーの意識の向上や行動の改善を促すことができます。なにより、場の空気がよくなります。

飛行機の客室乗務員は、このファシリテーションを意識的におこなっています。定刻より早く現地に到着したとき、客室乗務員は次のようなアナウンスを流すでしょう。

「皆様の速やかなご搭乗のおかげで、当機は福岡空港に定刻より10分早い11時50分に到着いたしました。定時運航にご協力をいただきましてありがとうございました」

定刻より早く到着した事実。

それが乗客の速やかな行動と協力の賜物である事実。

そして、感謝のひと言。

これらを伝えることで、乗客は自分も定時運航を左右するステークホルダーであり、今後も迅速な行動を心がけようと意識するようになります。このアナウンスには、乗客への期待役割を伝える効果もあるといえるでしょう。実際、ある航空会社では、客室乗務員がこのひと言をアナウンスするようにしてから、乗客の行動が変わり、定時運航率が大幅に向上したそうです。

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