箱根でなかなか勝てない駒大・大八木監督の悩み

一方、全日本大学駅伝を大会新で突っ走り、3連覇と最多15回目の優勝を飾った駒大。勝因について大八木弘明監督は「2区でしょうね」と答えている。

「(2区の)圭汰がいいところまで持っていき、(3区の)主将の山野力(4年)がトップに立った。(4区の)山川拓馬(1年)は度胸がいいので、使ってみたかった。成功(区間賞で後続とのリードを1分以上に拡大した)したので本当にホッとしています」

駒大は2区の佐藤圭汰(1年)が31分13秒の区間2位(区間新)。ライバルの青学大を9秒差で追いかけるかたちでスタートすると、3km手前で先頭に立つ。最後は創価大・葛西潤(4年)に逆転を許したが、期待通りの快走を見せた。

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完勝の原動力となった佐藤は昨季、京都・洛南高時代に1500m、3000m、5000mの3種目で高校記録を塗り替えたスーパールーキーだ。今季は5000mでU20日本記録(13分22秒91)を打ち立てている。

出雲は2区(5.8km)で区間新(区間賞)、全日本(11.1km)も2区で区間新(区間2位)と大活躍した。しかし、箱根駅伝はハーフマラソンほどの距離になる。

佐藤の箱根駅伝参戦に関して、大八木監督は「私ははまだ(箱根は)やらなくてもいいかなと思うときもあったんですけど、本人に『やりたい』という気持ちと準備ができれば、可能性は大かもしれない。1人でも走れるタイプですし、20km、25kmは練習でもやれているところもあるので」と話している。

長年取材しているからわかるが、実はこの言葉のなかに大八木監督の“悩み”が隠されている。

駒大は箱根駅伝で7度の優勝を誇るが、2009年以降の優勝は一度(2021年)だけ。しかし、青学大と異なり、中村匠吾(富士通)が東京五輪の男子マラソンに出場したように、五輪・世界選手権代表に多くのOBを送り込んできた。今夏はエース田澤がオレゴン世界選手権の男子10000mに出場している。

10000mで日本歴代2位の27分23秒44を持つ田澤はトヨタ自動車の入社が内定しているが、大学卒業後も駒大をトレーニング拠点にする予定。大八木監督とともに世界を目指すという。田澤は来年のブダペスト世界選手権、再来年のパリ五輪を10000mで狙っており、まずは日本記録(27分18秒75)を上回るブダペスト世界選手権の参加標準記録(27分10秒00)がターゲットになる。

「田澤は今冬、10000mで記録を狙わせようと思っているんですけど、箱根との兼ね合いが難しい。昨季はたまたまうまくいきましたけど、けっこう負担はかかってきますよ。全日本のダメージがあると思うので、少し休ませて27分10秒の壁にどれだけチャレンジできるのか。それがまた箱根にもつながるかもしれないですし、本人と話をして決めたいです」

大八木監督はそう話していたが、田澤は11月26日に行われる八王子ロングディスタンスの10000mにエントリー。同レースには全日本大学駅伝を欠場した10000mで日本人学生歴代3位の27分41秒68を持つ同じ駒大の鈴木芽吹(3年)も登録された。