「無死一塁の送りバント」は逆効果
「犠牲バント」の有効性も、「得点期待値」や「得点確率」の観点から評価することができる。
犠牲バントとは自身がアウトになることを前提に、走者を1つ進める戦法であるが、ビル・ジェームズは『Baseball Abstract』の中で、得点期待値を用いて犠牲バントの有効性について語っている。
結論は「無死一塁のランナーをバントで送って1死二塁にする戦術に、得点期待値を上げる効果はなし」というものである。
さきほどの図表5を用いてそのことを説明しよう。
「無死一塁」での得点期待値は0.790である。しかし、「1死二塁」では0.636と低くなっていることがわかる。
つまり、無死一塁を1死二塁にするための犠牲バントは、得点期待値を下げるという結果を引き起こすのだ。
では、得点確率という視点からはどうだろう。
図表6から、無死一塁の得点確率が39.7%であり、1死二塁の得点確率が37.1%であることがわかるので、得点確率の観点からみても、この犠牲バントは有効な作戦ではないと言える。
ただ、無死一二塁での得点確率と、1死二三塁での得点確率を比べると、58.3%から65.2%に上昇していることがわかる。
つまり、無死一二塁を1死二三塁にする犠牲バントは、得点確率を高めるということになる。
国際大会では、延長戦でタイブレーク制が導入されることが多くなった。
この際、イニング開始時にすでに無死一二塁という状況となっているので、犠牲バントを決めて1死二三塁にすれば、得点確率を上昇させることができる。
後攻で同点というシチュエーションでは、1点入れれば勝負が決まるため、こういった場面での犠牲バントはとても重要な作戦であると言えよう。