この10年ほどの間に、セイバーメトリクスの考えに沿って、2番打者に長打率の高い選手を配置するチームが少しずつ見受けられるようになってきた。

セ・リーグでは2015年に、2番・川端慎吾(首位打者、OPS.822)、3番・山田哲人(本塁打王、OPS1.026)、4番・畠山和洋(打点王、OPS.815)という打線を組んだ東京ヤクルトスワローズがリーグ優勝している。

また、2019年に、2番・坂本勇人(OPS.971)、3番・丸佳浩(OPS.883)、4番・岡本和真(OPS.828)という打線を組んだジャイアンツもリーグ優勝という結果を残した。

「先頭打者を四球で出すな」は誤り

最近ではテレビの実況中継においても、セイバーメトリクスが編み出した指標が紹介される機会が増えてきた。

だが、野球を愛好する方々の中には、馴染みのないデータに対して抵抗を感じる向きも多いだろう。

また、長年のプレー経験から得た知見により「野球とはこういうものだ」「野球はこうあるべきだ」とおっしゃる方も少なくない。

たとえば「先頭打者を四球で出すな。四球で出すくらいなら打たれたほうがいい。四球の出塁はヒットの出塁よりも点が取られやすくなるからな」と投手に説く指導者に、心当たりはないだろうか。

実は日本プロ野球(NPB)のデータでは、概ね、先頭打者を四球で出塁させたときの失点確率(その回に失点する確率)と、シングルヒットで出塁させたときの失点確率は、どちらも約40%となっている。

平均失点も約0.8であり、統計学的に有意な差は見受けられない。

「四球で出すなら打たれたほうがいい」は誤り
写真=iStock.com/Matt_Brown
「四球で出すなら打たれたほうがいい」は誤り(※写真はイメージです)