「45年間で約900万円納付、年金1100万円受給」に魅力はあるか

64歳までの納付期間延長はこうした事態を避けるためで、仮に受給額2割減に抑えられたとすると、保険料の支払い総額が895万8600円と12.5%増えるかわりに、毎月の受け取り額は月額5万1853円で、なんとか5万円台を維持できる。ただし、積立額(負担)が増えたことで、運用利回りは男で年0.98%、女で年1.52%まで下がる。

だが、これで社会保障制度が安定する保証はない。

そこで、あり得る可能性のうち(たぶん)最悪のケースとして、保険料納付期間を64歳まで延長しても年金受給額が現在より3割減るとすると、資産運用の利回りは男で年0.57%、女で年1.15%になる。

男の場合、45年間で約900万円の保険料を納め、年金として1100万円あまりを受け取ることになるが、20歳の若者がこの計算を見せられて、年金制度に魅力を感じるだろうか。

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69歳まで保険料を納める「残酷な未来」

なお、現行制度のまま年金の受給開始年齢を引き上げていくことも考えられるが、同じように試算すると、68歳の支給開始での年利回りは男で1.71%、女で2.18%、70歳の支給開始では男で1.33%、女で1.85%に下がる。

現実的なのは、「厚生年金の適用拡大」「厚生年金の報酬比例部分の取り崩し」「保険料納付期間の延長」「年金の受給開始年齢の引き上げ」「マクロ経済スライドによる受給額減額」のすべての組み合わせになるだろう。

いずれは、20歳から69歳まで50年間保険料を納め、70歳から減額された年金を受給する「1億生涯現役社会」が到来すると予想しておこう。

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