10月14日に(カザフスタンで)行った記者会見でも、プーチンは実にリラックスし、自信に満ちていた。少なくとも、そう見せた。彼の頭の中まではのぞけないが、権力基盤に不安なしという感じで振る舞っていた。今はまだ、彼に取って代われる人物がいないという事情もあるだろう。

しかしプーチン政権の安定性に関する評価は、こうした見た目だけで決まるものではない。この戦争を始める前に比べれば、プーチンの権力基盤は格段に弱まったと言えるのではないか。

動員令を出してからは、さらに弱まった。あれが分岐点だった。あの瞬間、ロシア社会は今も「平時」にあるという従来の言説が通用しなくなった。

プーチンは今も、自分に取って代われる人物はいないと考えているだろう。しかし独裁政権というものは、実際に崩壊するまでは安定しているように見えるのが常だ。個人に権力が集中した体制では、政治的な変化が何の前触れもなく起きやすい。

他国の指導者の退陣や失脚のタイミングを正確に予測するのは難しい。その影響を評価するのも難しい。しかし、そうした政変の可能性が高まっているのなら、それを警告するのが情報機関の役目だ。

プーチンに関して言えば、彼に不利な条件は整ってきた。時期は分からないが、リスクは高まっていると言える。

——おっしゃるとおり、プーチンの頭の中までは見えない。しかし、彼にはどんな選択肢があるのだろう? 今はとにかくウクライナ人に痛い思いをさせようとしているが、ほかにも手はあるのか。

これ以上にウクライナの占領地を失うことなく、この冬を乗り切る。プーチンはそれを最優先にしている。

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——ここまではロシアの話をしてきたが、次はウクライナとその選択肢についてだ。あなたは最近、ウクライナを訪れてウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会い、ロシア兵による民間人虐殺のあったブチャなどを視察した。何か意外な発見はあったか。

3週間ほど前のことで、もう昔のことのように思えるが、いくつか印象に残った点がある。まず、私はウクライナへの軍事物資供給の拠点となっているポーランドの基地を訪れた。そこの稼働率は、せいぜい60%程度だった。

つまり、軍事物資の支援に関して、ウクライナの同盟諸国はもっと多くのことをやれるだろう。私はそういう印象を持った。

2つ目は、ウクライナ社会の強烈な回復力についてだ。世論調査を見れば、ウクライナ国民の大半が自分たちの勝利を信じていること、いかなる領土の割譲にも応じるつもりがないことは分かる。しかし現地に足を運ぶと、また違った面が見えた。