——つまりロシアには、プーチンの戦争に抗議する人々と、もっとやれと言い募る極右の強硬派がいるわけだ。そして今は、強硬派の影響力が強まっているようだ。なぜ、そうなってしまったのか。

実際、プーチンは難しい舵取りを強いられている。戦争反対の声と、もっとやれという意見の板挟みになっている。ご指摘のように、戦争反対の人はたくさんいる。動員令を出したことで、より多くのロシア人家庭に戦争の現実が持ち込まれた。

プーチンは従来、ウクライナでの戦争が国民生活に影響を与えることはないと語り、国民を落ち着かせようと努力してきたが、動員令で全てが吹っ飛んだ。

一方、私が驚いたのは、国内メディアで最強硬派の声が堂々と流れていることだ。

国営テレビを見れば分かるが、その先頭に立っているのはチェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長だ。民間軍事会社ワーグナー・グループを率いる政商エフゲニー・プリゴジンや、大統領経験者のドミトリー・メドベージェフもいる。彼らはプーチンに、勝つためには手段を選ぶなと迫っている。

——あなたが驚いたというのは意外だ。なぜ驚いたのか。

こうした過激な声は、制御するのが難しい。ひとたび解き放たれると、後は勝手に増殖し始めるからだ。

そういう過激派の存在自体は、別に驚きではない。プーチンは従来、そういう主張から距離を置くことで、自分は(それなりに)理性的な指導者だという見せ方をしてきた。そこまでは想定の範囲内だ。

しかし私を驚かせたのは、彼らが堂々と発言を続けている事実、そして彼らがアクセルを踏み続けているように思える点だ。

そうした過激な主張が一段と高まって、プーチンとしてもロシア社会に根強く残る(民族主義的な)強硬派をなだめるため、作戦の変更を余儀なくされた。10月10日以後の都市部への猛攻は、そのように理解すべきだと思う。

——この戦争は高くつきすぎて、さすがのプーチンも権力維持が難しくなるという見方には同意するか。

私の思うに、プーチンは今も、自身の権力基盤は盤石だと信じている。一般論として、独裁的な人物は誇大妄想の持ち主だ。だからプーチンも、いろいろな手を使ってエリート層を分断し、複数の派閥を競わせてきた。

一方でセキュリティーサービスは自分に絶対忠誠を誓う人間で固め、国内メディアと情報環境もしっかり統制している。